「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

ニホンザルとは大違い…クマネズミの知られざる真実

長く飼育され続けてきたハツカネズミについての研究は50~60年前ごろから盛んになり、その生態については詳しく知られている。ドブネズミもラットと呼ばれて実験動物として長く飼育されてきた。

 

研究者たちが絶えず目にする生き物だから、その行動についても同様に詳しく調べられ続けてきたはずである。しかし、今回のような観察がされたという報告はない。

 

相手の後ろに回り背中に手を置いて耳元でキーと鳴く。この儀式のような行動は2個体間に共通した認識がなければ成立しないはずだ。ネズミの寿命を考えると、生まれてわずか数カ月の子ネズミたちがこの行為の持つ意味を共有している。実に驚くべきことだ。

 

そして、この行為は集団の数が多い時に、子同士のもめごと処理を、いつまでも争うことなく収めるために有効な方法でもある。つまり必然的に、クマネズミが集団行動をしていることと、社会行動と呼べるような行動を行っていることを認めざるを得なくなると思うのだが、その両方共、学者研究者と呼ばれる人たちが何度も確認した後でなければ、公に認められることはない。

 

研究者たちが簡単に確認できればこの観察結果も生きてくるのだが、実験動物として主に飼育されているのはラットと呼ばれるドブネズミの方であってクマネズミではない。

 

クマネズミは飼育しにくいと聞いたことがあるので、研究者たちの手元にクマネズミはいない。もし仮に捕獲しにくく飼育しにくいクマネズミだけが持っている特異な社会行動を、たまたま私だけが初めて観察したのだとすると、公に認めてもらうのはとても困難なことだ。

 

そして、儀式化された動作の1つひとつまで遺伝子によって決められているとは思えない。今回私が観察したクマネズミの行動が、遺伝的に生まれつき持っているものではなく、集団内の子たちが幼い時に学ぶことで親から子に伝わって来た社会行動だとすると、仮にクマネズミを飼育することができたとしても確認することはできないだろう。

 

個体間の序列さえ守っていれば集団が維持されるニホンザルとは違っていて、序列が無くてもルール順守を徹底させているクマネズミの方が、より高度で安全な仕組みを持っているとさえ思ってしまう。

 

上下関係を絶えず気にしながら、より上の地位を狙っていつも争う事ばかり考えているニホンザルとは大違いだ。どんな状況であっても、争わずにもめ事を解決する方法を持っているクマネズミの方が優れているとさえ言える。

 

言葉を持たない生き物が、人の社会で言うところの、話し合いだけで争いを解決するようなものだ。集団行動を行っている生物でこのような行為をする生き物はいるのだろうか。是非知りたいところである。

 

 

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捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

山﨑 收一

幻冬舎メディアコンサルティング

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