「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

「警告しただろうが!」もしかして2匹は旧知の仲?

どんな生物であれ、お互いが知らない者同士なら、後ろから頭をがじがじと齧られるかもしれないのに、抑え込まれ、相手に背を向けてじっとしている奴などいる訳がない。

 

その時2匹は旧知の間柄のようだと感じた。侵入者は無抵抗なまま、耳元で大声で怒鳴られているのに服従の姿勢をとって顔を合わせようとすらしない。そして、相手が服従の態度を示しているにもかかわらず、先住者による儀式のような行為は一度で済まな かった。先住者は自分の置かれている状況と周りの状況を認識することができなくなるほど強い興奮状態に陥っているとその時に思った。

 

侵入者の行動も不思議だ。私なら旧知の間柄であったとしても、何度も服従の姿勢を要求されれば牙をむいて逆らうポーズくらいはするだろう。

 

先住者は何が原因で、どの時点でこれほど強い興奮状態に陥ったのか。闘争行為と呼べるものが全く無く、この後すぐに仲良くなり二度と争うことがなかったので、お互いがどんな結末になるか分かった上での行為ということになる。約束事であり、儀式のような行為である。

 

私は2匹のやり取りを次のように想像してみた。

 

先住者「この食料は先に見つけた俺のものだ! それを取りに来るなんてルール違反だろ!」(興奮口調で)

 

侵入者「入りたくて入ったんじゃない! そこの食料なんかどうでもいい。分かったから、早くいつものをやってくれ! 人が見ているじゃないか! それも分からんのか!」

 

先住者は憤りのあまり、他のどんなことよりも侵入者に対する儀式の方を優先し、極めて早い段階で興奮状態のスイッチを入れた。

 

侵入者がケージに入るとすぐに飛び出してきたのだが、 新聞紙の下にいる先住者はどの段階で侵入者を認識して興奮状態になったのだろう。侵入者が入って来る前か、それとも後か。

 

入って来る前に既に侵入者を認識していたかのような飛び出し方であったし、侵入者は入る前から先住者を認識していたかのような逃げ方であった。

 

それなら、どのような方法で、入って来る侵入者を認識し先住者を認識していたのだろう? 個体ごとの匂いを離れた場所から互いに感知することができて、当然のように早い段階でお互いが認知できたかもしれない。

 

ネズミは人より高い波長の音を感知することができる。もしかすると侵入者が入ってくる前に、人が感知できない方法で侵入者に警告を発していたのかもしれない。

 

とにかく、先住者の興奮の度合いは侵入者が入ってくる前に増していったのだろう。侵入者がそれを無視して入って来たために先住者の興奮状態がマックスに達したと考えると、納得がいく。

 

先住者「警告しただろうが! それが分かっているのにどうして入って来たんだ」

 

 

次ページその場を収めるために相手を説得していたように感じる

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