「もう二度と会いたくない」真実が判明し…
そして、Hさんが支払うといっている金額の根拠となった「2億5000万円」という不動産の時価ですら、Hさんの都合の良いように税理士が査定したものかもしれないと考えるようになったのです。
そのような依頼の経緯でしたので、私はいつもより慎重に作業を行ないました。私の鑑定評価の結果次第では、GさんとHさん姉妹の人間関係が好転するかもしれなければ、悪化するかもしれないと思われたからです。そして鑑定評価を行なった結果、税理士が主張する不動産の価格は妥当なものだと判明しました。
Gさんは、鑑定評価の結果には納得したものの、やはり遺言書そのものの内容と、遺言書どおりとはいえ、一方的なHさんの主張に納得できず、「Hとはもう二度と会いたくない」とまでおっしゃっておられました。
もしかすると、遺言書が書かれた時点で、この案件の結末はすでに決まってしまっていたのかもしれません。しかし、誰かが、遺言書に母親がこのような遺言を残した思いを書くように助言を行なったり、Hさんの主張をGさんに伝える際にもっと心配(こころくば)りをしたりすることができれば、このような事態は避けることができたかもしれません。
私は、相続においては、各々の専門家が各方面からの検証を行なったうえで相談に対応しなければならず、その場合において、「円満相続」というキーワードは決して忘れてはいけないと痛感しました。
私には、まだ幼い子どもが2人います。互いにとても仲が良く、ニコニコしながら一緒に遊んでいる姿や、年上の長男が年下の長女の面倒を一生懸命みている姿を見ていると、とても心が温かくなり、ささやかな幸せを実感します。そんなふたりには、これからも仲良く助け合って生きてほしいと思っています。
もし、私が死んだ後、相続が原因でふたりの仲が悪くなり、口もきかないようになってしまい、他人以下の関係になってしまうことがあったとしたら、とても悲しいことです。
このような子どもへの思いは、すべての親に共通なのではないでしょうか。