「不動産の共有相続」には本当に気をつけたほうがいい
兄弟や親子等の血のつながりは先祖から脈々と受け継がれてきたものであり、切っても切り離すことができないものであると考えます。自分の死後に、相続がきっかけで兄弟や肉親が争うようなことは、絶対に避けるべきだと思います。
この案件に携わって以降、私は相続相談にあたっては、常に円満相続を心がけ、争いを回避するか、争いが生じたとしても、できるだけ大きくならないような対策を提案するようにしています。
■不動産の「共有相続」という時限爆弾
相続発生時点において、すぐに問題が発生しない場合であっても、しばらく期間が経過してから、その相続を原因とする問題が発生してしまう場合があります。不動産を共有にして相続するケースです。
相続資産のうち、現金などの金融資産を分割するのは簡単です。例えば、1000万円の現金を2人で分けるのであれば、500万円ずつに分ければよいのですから、話は単純です。それに対し、不動産は簡単に分割できないことから、何人かの相続人で一つの不動産を一緒に所有する、いわゆる共有にしてしまう事例が多く認められます。
確かに、共有にしてしまえば、「不動産の価格がいくらであるのか?」という問題にかかわらず公平に配分することが可能ですし、当初の相続人同士は兄弟姉妹等の近い血縁関係にあることが多く、共有不動産の管理や処分についての意思の疎通も比較的簡単なため、すぐに問題が顕在化することはありません。
しかし、当初においては、それぞれの所有者が兄弟姉妹等の血縁が近い親族関係にあったのが、代替わりを経るにつれて、従兄弟姉妹や甥(おい)・姪(めい)と叔父・叔母といったように、少しずつ血縁が遠い親族関係へと変化していきます。また、甥の妻や姪の夫というように、利害関係者もどんどん増えていきます。
こうして、時の経過とともに利害関係者が増え、その関係が複雑化していくと、各関係者で互いの利害を調整することが困難になります。
一部の所有者が、共有持分を親族以外の第三者へ売却することにより、一部の持分を赤の他人が所有するに至るケースもあるでしょうし、いざ売却したいと思っても、一部の関係者が反対したりして、意思決定が困難になる場合もあるでしょう。