「妹が母に何かを吹き込んだ!」姉、遺言内容に激怒
依頼者のGさんは60代の女性で、数年前に父親を、数か月前には母親を亡くされ、その相続財産を妹のHさんと分割するにあたり、不動産鑑定評価をしてもらいたいとのことでした。
相続財産は大部分が不動産でした(母親が住んでいた自宅と賃貸アパート)。妹のHさんが依頼した税理士によると、その価値は時価でおよそ2億5000万円、そして金融資産(主に預金)が3000万円分ありました。
母親は遺言を残しておられたのですが、その内容は、不動産はすべて妹のHさんに、残りの金融資産はGさんに相続するというものでした。しかし、不動産の価値が2億5000万円で、金融資産は3000万円。Gさんとしては、納得がいきません。
「確かにHさんのほうが晩年の母親の世話をしていたが、遺言書の内容に格差が生じているのは、Hさんが母親に何か吹き込んでいたからに違いない」と思っており、Hさんに対する不信感でいっぱいでした。
そんなGさんのところに、妹のHさんが税務申告を依頼した税理士から、遺留分を侵害している分について金銭を支払うので、印鑑を持って事務所に来るようにと連絡がきました。
遺留分というのは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して確保しなければならない、相続財産の割合をいい、遺言等によって遺産分割の割合が指定されている場合であっても、主張することができます。
本事例の場合、相続人は被相続人の子どもだけなので、遺留分は2分の1。2人で分けるので、Gさんは相続財産2億8000万円(不動産2億5000万円、金融資産3000万円)のうち、4分の1の7000万円まで自身の相続分として主張することができます。
したがって、Gさんが相続する金融資産3000万円を引いた差額の4000万円を、HさんからGさんに現金で支払うことで解決をしたいといいます。しかし、その説明があまりに一方的であったため、Gさんはさらに不信感を募(つの)らせました。