「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

もしや家族のために率先してチャレンジしていた…?

個々のネズミが常にそのルールに従って行動していると考えた場合、豊富な餌に対する優先権は真っ先に近づいてきた大きい個体にある事になる。

 

映像に映っている個体の数から判断してこの集団は家族集団である可能性が高い。ネズミが暗視カメラの赤外線を感知している可能性が高いので、警戒させないためにも一晩だけ照明をつけたままにしていた。

 

暗くして暗視カメラだけにした場合、物陰から赤外線を反射した2つの目が不意に現れ、じっとカメラの方を見ているのだが、明るくしておくとそのようなことはなく自然な動きが観察できた。

 

餌の手前に見慣れないものがある場合、クマネズミは警戒心を優先し、不用意に行動しないことがわかる。

 

仕掛けにチャレンジした大きい個体は、この場合、食べきれないほどのパンを独占するためにチャレンジしたのだろうか?

 

後に、捕獲した3頭のクマネズミをしばらく飼ってみて分かった事だが、1日に1匹が食べる量は平均して6枚切り食パン1枚の5分の1~6分の1に過ぎない。

 

そして、捕獲具を使って観察した例の中に、1匹では食べきれないであろう豊富な餌が一晩で食べ尽くされた例があった。

 

勇気ある1匹のチャレンジが成功した後で、餌場を共有する集団が仲良く食べたかもしれないと考えた場合、勇気あるネズミのとった行動、すなわち仕掛けに率先してチャレンジする行動は、餌を独占するためではなく、集団内である役割を持つ個体が進んでその役割を果たしたからではないか?

 

この時には思いつかなかった発想であり疑問である。

 

豊富な餌があっても、親のチェックが済むまでは子は不用意な行動をしない。そんなルールが集団内にあるような気がしている。

次ページ飛躍した推測である事は十分承知しているが
捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

山﨑 收一

幻冬舎メディアコンサルティング

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