「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

山盛りに置いたパンはそのまま…驚くべき結果が!

テストの結果は、1つの小さい仕掛けが2mほど離れた場所にころがっていたので、1匹が足を突っ込んだということと、それが抜け落ちたということがわかった。山盛りに置いたパンはそのままである。

 

その様子を暗視カメラで撮影したのだが、面白い様子が観察された。画面には、数匹のネズミが行き来する様子が写っていたのだが、画面の奥にいる小さい個体は仕掛けに全く近寄ろうとしない。大きい個体が数回様子を窺うように近づいて来るのだが、すぐに画面からいなくなる。

 

当時は6時間しか録画できなかったので、設置後6時間を過ぎた早朝に1匹が仕掛けにチャレンジしたことになる。

 

設置してすぐにネズミが群がってくる様子が映るだろうと予想していたのだが、そうはならなかった。

 

ネズミたちはパンの存在をすぐに認知したはずなのに、小さい個体はまったく近寄ってこない。まるで、大きい個体に遠慮し近寄ることさえできないように見える。大きい個体も、仕掛けの近くで立ち止まって思案する様子もなく、近くまで来て通り過ぎるだけである。

 

パンを認知しているが、警戒心の方が強く何回も断念したという風に見えた。チャレンジしたのは仕掛けに足を突っ込んだ1匹だけであり、おそらく大きい個体であろうと思われるのだが、決心するのに6時間以上かかった。

 

そして、仕掛けに対するチャレンジは1回で終わっていたため、2回目以降のチャレンジと他のネズミのチャレンジはなかったことになる。

 

映像から、いつもの餌場に突然現れた豊富な餌に対するネズミたちの行動が観察された。豊富な餌に対して競合し合うネズミが映っていないので、映像に映っている集団は、よそ者を含まない、餌場を共有する集団であると考えられる。

 

そして、通常その集団が共有する餌場に小さい餌が落ちていた場合、いち早く見つけた者に食べる権利があり、体の大小と強弱は関係なく、いち早く、口に入れた者の勝ちとなるだろう。

 

普段めったに落ちていないほどの豊富な餌が餌場に出現した場合、餌場を共有する集団内の個々の個体がどのように行動するかが観察された。

 

好奇心の強い子ネズミたちが我先に集まって来ることも予想していたのだが、そうはならなかった。争う様子が映っていないので、豊富な餌をめぐっては、無用な争いが起きないように集団内に決まったルールがあるようである。

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