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社長の「捨てる」勇気と覚悟が必要な時代
私自身40歳、50歳と経験を重ねるうちに、1999年に一倉先生が亡くなられた後、親交のあった社長から相談が持ち込まれることが多くなってきた。
会社によっては創業者から息子さんへ事業承継をする時期にあたり、「後継社長の相談相手になってほしい」という要請や「経営計画の作成を手伝ってほしい」「新事業の立ち上げを手伝ってくれ」「どうしても無借金経営を実現したい」など、社長のリクエストは多岐にわたった。ときには、経営危機を乗り越えるために経営戦略を抜本的に見直すという難題の相談やコンサルティングもあったが、資金不足の悩みほど社長を苦しめるものはないことを改めて痛感させられた。
会社が大きくなれば後継者選定の苦悩、相続問題、親子間の確執、兄弟経営など同族企業特有の相談も多くなり、人間の崇高な部分と心の闇、愛憎、人生観や使命感など、社長として、親として、人としての領域が経営にとっていかに大切かを考えさせられることが多くなった。
深夜に電話で延々と堂々巡りの相談・愚痴が続くことも珍しくない。
先日も、10年以上一緒に勉強会を続けている50代の社長が興奮した様子で、会長との経営方針の対立で大ゲンカになった経緯をぶちまけてきた。冷静に議論すれば「オヤジはインフレ育ち、売上至上主義」VS「セガレはデフレ育ち、粗利至上主義」の戦いである。
行司としての私の軍配は明快である。
「どちらがお客様からの信頼が厚いか」「どちらが会社が強くなり潰れないか」「どちらが会社にお金を残せるか」「社員はどちらが幸せか」「どちらが時代の流れに合っているか」等である。
原理原則の多くは一倉先生に教わったが、残念ながら先生の時代には、長いデフレ経済の環境はなく、右肩上がりの市場が基本条件だった。さらには後継社長の立場からの社長学の記述もほとんどないので、社長といえども全権を行使できない会長との対立の悩みを、一倉社長学に求めづらいのも事実である。
不易流行という言葉があるが、同族企業の中堅・中小企業が長く繁栄していくには、親から子へ、子から孫へと伝えていくべき経営の原理原則とともに、その時代時代で社長の「捨てる」勇気と覚悟が極めて重要になることを実感している。
自社株、事業、商品、暖簾は確かに引き継げるのであるが、親子、兄弟といえどもオーナー社長にしか体得し得ない実学を引き継ぐことは難しい。
さらに、大きなお金と権力、名誉、失うことの恐怖、親族への愛憎が表裏一体で絡んでくるのが中堅・中小企業の経営であり、当事者の社長には「観念論」「一般論」が通用しない非情の世界である。