偏差値52からスタートし見事京都大学に合格した農業研究者・篠原信氏は、水耕栽培の分野にて続々と新規技術を開発している。同氏は書籍『ひらめかない人のためのイノベーションの技法』(実務教育出版)にて、「センスがなくても創造的な仕事を生み出すことは可能である」と断言しているが、その根拠は何だろうか? 本連載でひも解いていこう。

会話の入口は「悩んで気が弱くなった経験談」

おすすめは強がりを捨て、「自分も不安でいっぱいだった」と等身大の自分をさらけ出す話し方だ。何が正解か分からない、あっちの道に進んだほうがよいのでないか、こっちの道を進むと後悔するのではないか。そんな迷いの中にいる若い人に、自分も大いに不安になり、どうしたらよいか分からなかった、と気持ちを共有する語り口だと、若者は「この人は分かってくれる」と感じる。

 

共感が持てると、話を聞こうという姿勢になる。その上で、「迷いながらも情報をかき集めた」という経験を伝え、限られた情報から仮説を立て、思い切って試行錯誤を繰り返した話をする。

 

その後、「君は、今置かれた条件で、何か気づいたことはないかな?」と尋ねてみる。質問することで、若者が置かれている状況をあぶり出し、情報をかき集める。

 

「なるほど、それらの条件があるとすれば、君の置かれた状況はどういうことだと思う?」と、推論を立てさせる。

 

「だとしたら、君はどうしたらいいと思う?」と、挑戦する方法(仮説)を考えさせる。

 

「それが正解かどうかは私にも分からない。でも、話を聞いていると、たぶん君が考えた通りだろう。思い切ってやってごらん」と背中を押すと、質問によって促されたとはいえ、自分で考え導いた答えなので納得感がある。こうして、若い人は自らチャレンジしようという勇気が持てる。

 

あらためてまとめると、次のようになる。

 

年配者であるあなたが、若い頃は迷いの中にあったこと、なんなら、今もなお悩みは尽きないと告白し、若い人と同じであることを伝え、心を通わせること。

 

若い人の悩みに近い、自分の体験談を話し、観察して情報をかき集めることの重要性、正解は分からないけれども仮説を立ててみることの重要性、そして仮説に基づいた挑戦をしてみることの大事さを説くこと。

 

あらためて若い人の悩みに焦点を当て、「君の置かれている状況はどんなもの?」「それらの情報を総合すると、どういうことになるの?」「そういう状況だとすれば、君はどうしたらいいと思う?」と、問いを発することで若者の思考を刺激し、仮説を立てるのを助け、挑戦することを勇気づけること。

 

こうした方法は、年を食えばこそできることだ。たくさんの経験をしてきた年配者が、若い人の思考に寄り添い、伴走し、背中を押してくれることは、若い人にとって何よりのアシストになる。あなたがこうした接し方をしたら、若者は未知の世界に踏み入れる勇気を持って一歩踏み出すようになるだろう。

質問・相談が、年配者から「タメになる話」を引き出す

逆にもし、あなたが若者であるなら年配者の話を黙って聞かないほうがよい。黙っていられると、あなたが何に興味を持っているのか見当がつかないので、年寄りはついつい自慢話をしてしまう。けれども、あなたの側から「じつはこんなことで迷っているんです」と相談し、質問すれば、意外に高確率で一緒に悩んでくれる。

 

「もし私の立場なら、どうするとよいと思います?」と尋ねると、あなたの実力も考慮に入れた上で、できそうな方法を一緒に考えてくれる。年寄りは相談されるのが大好きだ。相談されると、かなり親身になってくれる。自慢話で一時的な快を得るよりも、誰かの役に立てることのほうが、はるかに嬉しいからだ。

 

悩みや迷いを相談したときに、「もし自分と同じ立場だったら」と親身になって考えてくれる年配者を、何人か見つけておくとよい。数多くの経験や知識によって、あなたのアイディアはさらにブラッシュアップすることができるだろう。

 

イラスト:吉村堂
年配者の正しいトリセツ イラスト:吉村堂

 

<ポイント>

年を食えば、若者がどんなことで悩んでいそうか、見当がつくはず。そこで自慢話をするのではなく、悩んで気が弱くなった経験談をしてあげてほしい。それが若者の心をほぐし、勇気づけ、アイディアを考えるゆとりを生む。

 

 

篠原 信

農業研究者

 

 

ひらめかない人のためのイノベーションの技法

ひらめかない人のためのイノベーションの技法

著者:篠原 信

カバーイラスト:植田 たてり

本文イラスト:吉村堂

実務教育出版

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