同じ助言でも…「人生の先輩」と「自慢おじさん」の決定的な差

偏差値52からスタートし見事京都大学に合格した農業研究者・篠原信氏は、水耕栽培の分野にて続々と新規技術を開発している。同氏は書籍『ひらめかない人のためのイノベーションの技法』(実務教育出版)にて、「センスがなくても創造的な仕事を生み出すことは可能である」と断言しているが、その根拠は何だろうか? 本連載でひも解いていこう。

「若者たちが話を聞かなくなった」と思いきや…

私はよく、学生さんとファミレスで深夜まで話し込むことが多かった。夜中の12時を過ぎると、さすがに私の話も聞き飽きただろうと思い、学生さんがトイレに入ったタイミングで帰る準備を済ませていたら、フリードリンクをおかわりして戻ってきた学生さんに「さあ、話の続きを」なんて言われて夜中の3時まで話し込む、という感じだ。

 

なぜ若い人は私の話を聞きたがるのだろう、と不思議に思っていたが、ある時期から当然と思うようになった。すると皮肉なもので、当然視したとたんに学生さんが話を聞いてくれなくなった。むしろ、早く話が終わらないかな、とソワソワされるようになった。私の話にうなずくどころか、首をかしげて「そうでしょうか?」と口答えされるようになった。

 

ずいぶん偉そうな口を叩くじゃないか、と思っていたら、他の学生さんも私の話を聞かなくなってきた。ということは、どうやら学生さんが変わったのではなく、私が変質してしまったらしい。どこが変わったのだろう、と考えてみて気がついた。「自分の話したいことを話していた。早い話、自慢話ばかりしていた」と。

 

逆に、彼らが眠い目をこすってでも、私の話を聞きたがっていたときは、相手が聞きたそうなことを話していた。自分が学生だった頃、どんな不安や苦悩を抱いていたか。同じ苦しみがあるのではないか。だとしたら、こんな話が参考になるだろうか、と若い人の関心に寄り添うように話していたとき、学生さんは身を乗り出して話を聞いてくれた。そう思い直し、彼らの反応を見ながら試行錯誤して、若い人が悩んでいそうな話題を心がけたら、また夜中まで話を聞きたがるようになった。

若者が聞きたいのは「ヒントになる説教」

どうも人間(特に男性)、年を食うと説教したくなるものらしい。年齢に応じて知識も経験も増えてくると、それらが欠落した若者が愚かに見えてくる。だから親切面して教えてあげたくなるのかもしれない。

 

しかしながら、「教える」という行為は、基本的に「劣化コピー」しか生み出せない教育法だ。どれだけ鮮明でキレイな写真も、コピーの上にコピーを重ねると、どんどん画質が悪くなっていく。教えてもらった側は、言葉の上っ面を理解するだけで経験が欠落しているから、余計に知識が劣化しやすい。そうなると年配者はまた教えたくなって、うるさがられる。

 

昔と違って、若い人は年配者のお説教を聞きたがらない、とよく言われる。特に私のような団塊ジュニアの人間は、お説教を嫌った世代だ。そのせいか、年配者の方も若い人に遠慮して、お説教する場面が減った。

 

だが、今の若い人は年配者の話を聞きたがっている。事実、何時間も「お説教」を聞き続ける若い人の姿を私はよく見ている。若者が嫌いなのは、お説教というより自慢話だ。年配者は自分の知識や経験を「どうだ、すごいだろう」とひけらかし、驚いてほしいと願っている。それが若い人にはわずらわしいのだろう。だから、「すごいですね。でも、私には関係ありません」となってしまう。

 

では、若い人が好むお説教とは、どんなものか。それは、「ヒント」だ。若い人は知識も経験も少ない。だから未来に対して大きな不安を抱いている。その不安をどうしたら克服できるのか、何かヒントがほしいと願っている。年配者のお説教が「もし何かヒントになれば」と願ってのものなら、若い人は身を乗り出して聞いてくれる。

 

しかし同じ内容でも、自慢話風だと違う。「俺はこんな艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えて、今の地位を築いた。どうだ、すごいだろう」という話は、不安でいっぱいの若者にはどうでもよい話に聞こえる。若い人は聞く耳を持たなくなり、年配者であるあなたは若い人から何の情報も引き出せなくなる。あまりにもったいない。

 

イラスト:吉村堂
若い人が聞きたいのはヒントになる話 イラスト:吉村堂

 

イラスト:吉村堂
若い人が聞きたくない話 イラスト:吉村堂

農業研究者

1971年生まれ、大阪府出身。農学博士(京都大学)。

中学時代に偏差値52からスタートし、四苦八苦の末、三度目の正直で京都大学に合格。大学入学と同時に塾を主宰。不登校児や学習障害児、非行少年などを積極的に引き受け、およそ100人の子どもたちに向き合う。

本職は研究者で、水耕栽培(養液栽培)では不可能とされていた有機質肥料の使用を可能にする栽培技術や、土壌を人工的に創出する技術を開発。世界でも例を見ない技術であることから、「2012年度農林水産研究成果10大トピックス」を受賞。

著書に『自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書』(文響社)、『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』(朝日新聞出版)があるほか、「JBpress」や「東洋経済オンライン」などに記事を発表している。

著者紹介

連載AI時代を勝ち抜く人材になる!センスがなくても創造的な仕事を生み出す方法

ひらめかない人のためのイノベーションの技法

ひらめかない人のためのイノベーションの技法

著者:篠原 信

カバーイラスト:植田 たてり

本文イラスト:吉村堂

実務教育出版

センスがなくてもイノベーションできる! オックスフォード大のオズボーン准教授によると、AI時代の人材には、「創造性」が重要であるという。 創造性というと、「生まれつきのセンス次第」という印象が強い。すると、セ…

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