夏菜恋の意志を受けた「公正証書遺言」が完成
「それでは鮫島徹さんの意志を受けて、公正証書遺言を作成しました。それを読み上げます」
公証人の石井が鞄の中から紙を取り出した。さすがプロだ。昨夜、遅くメールで送付した内容を基に短時間で正式文書を作成してきた。
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公正証書遺言、平成28年2月14日
本職は、遺言者鮫島徹氏の嘱託により、後記証人の立会をもって次の遺言の趣旨の口述を筆記し、これを証書に作成する。
第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記の不動産その他一切の財産を藤堂隆氏(昭和46 年3月21 日生)に遺贈する。
土地
所在 東京都目黒区駒場4丁目○
地番 ○○○番○
地目 宅地
地積 192.28平方メートル
建物
所在 東京都目黒区駒場4丁目○
家屋番号 ○○番○
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート2階建
床面積 1階 72.34平方メートル
2階 65.36平方メートル
株式
○○証券○○支店
株式会社○○○の株式全部
株式
株式会社サマーナラブの株式全部
ゴルフ会員権
住所 神奈川県箱根町○○○番地
○○○ カントリークラブ
第2条 遺言者は、遺言者および祖先の祭祀を主宰すべきものとして、藤堂隆を指定する。藤堂隆には、墓地を含む代々の墓および仏壇など祭祀に必要な財産の一切を遺贈する。
第3条 遺言者は下記の預貯金をすべてあしなが育英会に寄付する。
金融機関 株式会社○○銀行○○支店
種類 普通口座
口座番号 12345○○
名義人 鮫島徹名義の貯金債権のすべて
金融機関 株式会社○○銀行○○支店
種類 普通口座
口座番号 78925○○
名義人 鮫島徹名義の貯金債権のすべて
第4条 遺言書は、本遺言の執行者として、ツチヤヒロアキを指定する。
万一、この遺言の執行完了以前にツチヤヒロアキが死亡、又は執行が不能な状態になったとき、もしくは遺言執行者への就任を辞退したときには、新たな遺言執行者として次の者を指定する。
東京都中野区○○丁目○○番
行政書士 武田誠
第5条 遺言者は、遺言執行者に対し、次の権限を授与する。
不動産、預貯金、株式その他の相続財産の名義変更、解約および払い戻し
貸金庫の開閉、解約および内容物の取り出し
本遺言の執行に必要な場合に代理人および補佐者を選任すること
本遺言を執行するために必要な一切の処分を行うこと
本旨外要件
東京都目黒区駒場4丁目○
遺言者 鮫島徹 昭和36年11 月○日生
遺言者は、印鑑登録証明書の提出により人違いでないことを証明された。
東京都練馬区○○町○丁目○番○―○○○号
証人 橋本智子
東京都世田谷区下北沢○丁目○番○号
証人 吉沢可南子
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「これで問題がなければここに署名と判を押してください」
石井は夏菜恋に遺言書を渡した。夏菜恋は、体を起こすと印を押した。