財産評価基本通達のルールでは、土地の評価は「時価」
土地の相続税評価額はどのように決まるのでしょうか。国税庁が土地の相続税評価をどうするのか、そのルールを決めています。そのルールを定めたものを財産評価基本通達(以下「通達」という)といいます。相続税評価額の計算方法はこれに記載されています。
ですから、通達の中身を理解することが、土地の評価を下げることにつながります。通達などというと少しややこしく感じるかもしれませんが、大事な部分のみわかりやすく解説していきます。
通達では、財産の評価は時価で行うこととされています。時価とは何でしょうか。通達の法則1―(2)にはこう書かれています。大事な部分ですので、引用してみます。
[通達]
第1章総則
(評価の原則)
1―(2)
時価の意義
財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。
わかりにくいですね。簡単にいえば、評価額は時価であり、時価とは「不特定多数の人が自由に取引をした場合に成立する価格」ということになります。つまり「市場価格」のことをいっています。
そして、通達には、その時価の計算方法も示されています。自由に取引をした場合の価格といいながら、国税庁が計算方法を決めているというのは一見矛盾するように思えますが、そこには「課税の公平性」がかかわっています。
株式などの場合は、証券取引所で取引が行われています。そこで取引されている価格が時価となります。誰でも新聞やインターネットで確認することができます。
ところが、土地の売買価格というものは公表されていません。同じ条件の土地であっても、交渉によって価格が変わることもあります。つまり、時価に幅があるのです。しかし、人によって計算が異なってしまうと、課税の公平性が保てないので、通達によって時価の計算方法(減価要因)を決めているのです。
減価要因を理解するには、実際の市場で売買価格がどのように成立するかを考えてみればよいでしょう。土地を売買する時の、買う側の理由を考えてみます。個人であれば多くの場合、マイホームを建築するために購入するでしょう。もし、その土地に家を建てる上での規制があれば、価値は下がることになります。ですから、その規制のほとんどが通達の減価要因として盛り込まれています。
筆者のように建築士の場合には、家を建てる際の規制はすべて把握しています。ですから、相続税の評価をする際にどんな減価要因が適用できるか、見つけ出すのは得意なのです。
特殊な場合は通達以外の評価方法も使える
ただ、通達ですべての減価要因を決めるのは不可能です。特殊なケースでは、通達に計算方法が規定されていないケースもあります。そのようなときには、通達以外の評価方法を使って評価してよいと総則1―(3)には書かれています。
[通達]
第1章総則
(評価の原則)
1―(3)
財産の評価
財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。
つまり、特殊な場合は通達以外の評価方法もOKです。次回以降、実際に土地を評価する方法などについて詳しく見ていきます。