「ひとり暮らしはかわいそう」は、本当なのか
高齢者のひとり暮らしというと、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか。実際にひとり暮らしをしている人は、健康で趣味や生きがいがあれば、年をとってからも、誰かと一緒に暮らすよりひとりのほうが気楽でいいと考えている場合が少なくありません。
ところが、ひとり暮らしをしていない人のなかには、「高齢になってひとりで生活するのはかわいそう」と思う人もいます。ひとりで暮らす若者に対しては、それほど気の毒がったりはしないのに、です。
つまり、ひとり暮らしがかわいそうなわけではなく、ひとり暮らしをしているのが高齢者だからかわいそうと思ってしまうのでしょう。これは、高齢者が子や孫に囲まれて幸せそうに過ごすという、昔のホームドラマのイメージが、いまだに多くの人の脳裏に染みついているからなのです。では、ひとり暮らしの高齢者は誰かと一緒に暮らしたいと思っているのでしょうか。
内閣府が2014(平成26)年に全国の65歳以上のひとり暮らし男女を対象におこなった調査では、「今のまま一人暮らしでよい」と答えた人が76.3%もいました。80歳以上では78.3%がひとりのままでよいと考えています。
当然ですが、本記事で取り上げるように、老若男女問わず、ひとりで暮らすことにはいい面もあれば悪い面もあります。高齢でのひとり暮らしには、もちろん不安もあるでしょう。でも悪い面はあっても、それを上回る利点があるので、元気なうちはひとり暮らしでいいと考える高齢者が多いのではないでしょうか。
『老後はひとり暮らしが幸せ』という著書もある大阪の辻川 覚志(つじかわ さとし)医師が、2015(平成27)年までの2年間に、医師会の相談電話や日々の診療を通じて60歳以上の人1000人近くに聞き取り調査をしたところ、ひとり暮らしのほうが、同居する家族がいる場合より生活満足度が高く、悩みを持っている人も少なかったそうです。