パウエルFRB議長講演と安倍首相辞任で埋もれた好材料

投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、DEEP INSIGHT。日々のマーケット情報や政治動向を専門家が読み解き、深く分析・解説します。

 

8月27日にオンライン形式で開催されたジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長は2%超のインフレを容認する新たな指針を発表した。そして、その翌日には安倍首相の突然の辞任報道があった。マーケットはこの2大ニュースの話題で持ちきりだったが、実はその陰に埋もれてしまったある重要な好材料が発表されていた。それは米アボット社が開発した新型コロナ検査キットだ。

今までとは違う新型コロナ検査キット

米医療機器大手のアボット・ラボラトリーズ(以下、アボット社)は26日引け後、新型コロナウイルスの検査キット「BinaxNOW」が米国でFDA(米食品医薬品局)よりEUA(緊急使用許可)を受けたと発表した。鼻の粘膜を採取することで簡易診断する「抗原検査キット」であり、ラテラルフローと呼ばれる技術が使用されている(自宅での妊娠検査の手法と似ている)。

 

特に画期的なのはコスト面だ。販売価格は1個当たりわずか5ドルで、他の検査キットのように大掛かりな検査装置も必要としない。検査結果も15分ほどで判明する。また、真の陽性率を示す感度は97.1%、真の陰性率を示す特異度は98.5%と、比較的精度が高いことも特徴のひとつだ。

 

さらに、アボット社は「Navica」というモバイルアプリを開発し、検査キットの結果をモバイルアプリに紐付ける計画だ。検査結果が陰性であることをモバイル・アプリが証明すれば、「デジタル搭乗券」のような利用方法が可能になるという。

米国政府は年内生産予定の検査キットをほぼ全て買い切る

このアボット社の新型コロナ検査キット「BinaxNOW」が発表された翌日、米国政府は年内生産予定の1億5,000万個を7億6,000万ドルで購入すると発表した。アボット社は10月までに月5,000万個の生産体制を構築する方針を示していたことから、米国政府は年内の生産分をほぼ全て購入することになる。

 

The COVID Tracking Projectによれば、米国はピーク時に1日約80万件の新型コロナ検査を実施していたため、(単純計算ではあるが)「BinaxNOW」によって検査数は倍増することになる。

「BinaxNOW」がもたらすインパクトは大きい

「BinaxNOW」によって、米国は大規模な都市封鎖を回避しながら、経済活動の再開を進めることが可能になるかもしれない。もちろん、新型コロナウイルスの終息にはワクチン開発が欠かせないわけだが、短時間で検査結果が判明する安価で精度が高い新型コロナ検査キットが普及し、その検査結果をモバイルアプリと連携させることが可能になるのであれば、大規模なイベント開催や、レストランやホテル、公共交通機関の利用、学校の再開などを促進させることができるかもしれない。株式市場はFRB(米連邦準備制度理事会)による金融緩和の長期化という支援材料に加えて、画期的な新型コロナ検査キットの承認という新たな好材料を得た可能性がある。

 

日次、配当無し、単位:ドル、期間:2020年1月2日~8月31日 出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成
[図表1]NYダウの推移 日次、配当無し、単位:ドル、期間:2020年1月2日~8月31日
出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成

 

日次、配当無し、単位:ドル、期間:2020年1月2日~8月31日 出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成
[図表2]アボット・ラボラトリーズ(ABT)の株価推移 日次、配当無し、単位:ドル、期間:2020年1月2日~8月31日
出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成


 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『パウエルFRB議長講演と安倍首相辞任で埋もれた好材料』を参照)。

 

(2020年9月1日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

投資家ご本人が、自ら考え、選び、投資をするプロセスを徹底サポート!
幻冬舎グループのIFAによる
「資産運用」個別相談会

 

[PR]11月25日(水)WEB&幻冬舎会場開催/特別イベント
新型コロナ・ショックに揺れる世界のマーケットをプロはどう見ているのか?
資産運用のプロから直接「本音」が聞ける!

IFA口座開設済みのお客様限定/特別フリートークセッションライブ

 

 

幻冬舎グループがIFAをはじめました!
「お金がお金を生む仕組み」を作りたいけど、相談相手がいない…
この現実から抜け出すには?

 こちらへ 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧