日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺言書にまつわる相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

父の思いが綴られた遺言書…それでもまさかの結末に

それから1カ月ほど経ち、Bさんの父が残した遺言書をきょうだいで確認することに。そこに書かれていたのは、自宅はBさんが、預貯金はC子さん、D子さん、Eさんで3等分することと書かれていたそうです。

 

Bさん「これが父さんの遺志だ」

 

Eさん「まあ、実家には兄さん家族も住んでいるわけだし、妥当な分け方だな」

 

D子さん「私たちには、400万円ちょっとずつ、ってことね……」

 

C子さん「はっきりいって、不公平よね。あの家、どれくらいの価値があるのか、はっきりは分からないけど、明らかにBが得しているよね」

 

Bさん「売ってお金にするわけじゃないんだから」

 

D子「そんなの、分からないじゃない。あそこの近所の家、8,000万円くらいで売られていたから……売ったら、結構な額よね」

 

Bさん「だから売ることはないって!」

 

Eさん「ちょっと待って。この遺言書、おかしくないか」

 

全員「えっ!?」

 

Eさん「日付が、9月31日って……9月は30日までだよな」

 

C子さん「ほんとだわ!」

 

D子さん「間違いがある遺言書って、どうなるのかしら?」

 

Eさん「無効だろ、無効!間違いがあるのだから」

 

Bさん「いや、せっかくの父さんの遺志を尊重しようよ」

 

Eさん「そもそもこの遺言書、本当に父さんが書いたのか?」

 

Bさん「もちろんだよ!」

 

C子さん「怪しいわね。Bに有利な遺言書だもの。急いで書いたから、間違いがあったんじゃないの」

 

Bさん「そんなんじゃないって!」

 

まさか、遺言書に間違いがあるなんて……。思いもしない結末に、Bさん、膝から崩れてしまったといいます。

 

親父、何やってるんだよ……(※写真はイメージです/PIXTA)
親父、何やってるんだよ……(※写真はイメージです/PIXTA)

解説:日付の記載が必要な「自筆証書遺言」

本来、自筆証書遺言には日付の記載は必ず必要で、日付が無いものや、特定ができない書き方(9月吉日など)で作成された遺言は無効とされています。

 

しかし、今回のケースのような、日付の書き間違いであると想定される場合においては、過去に『自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない(最判昭52年11月21日)』という裁判例もあり、直ちに無効にされるわけではありません。9月は30日までしかありませんし、恐らく9月30日に書いたのを、間違えてしまっただけだと思いますので。

 

遺言は故人の想いを残すものです。もしも、形式不備で無効な遺言となってしまった場合でも、お気持ちを汲み取って、故人の望む形にしてあげた方が、天国でもきっと喜んでくれると思います。

 

【解説者が『遺言書の基本』について動画で解説】

 

橘慶太
円満相続税理士法人

 

 

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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