たびたび議論されてきた「9月入学」
今日から9月。突然沸いて出てきた、安倍首相辞任と次期首相の話題で、ニュースのトップは譲っているものの、相変わらず、新型コロナウイルス感染拡大は止まりません。
そんななか、思い出されるのが「9月入学」というワード。非常事態宣言が発令され、全国の学校で休校処置がとられるなか、学業の遅れを取り戻す策として「9月入学」の実施が現実味を帯びていました。しかし「直ちに導入するのは困難」と政府が結論づけたことで、議論は一気に収束。日本の政治議論にありがちな「熱しやすく、冷めやすい」という展開そのものでした。
世論調査でも、「9月入学」が話題に出たころは「反対」が優勢でしたが、緊急事態宣言が延長されることが決定したころは「賛成」が上回るように。しかし緊急事態宣言が解除され、少しずつ日常を取り戻すようになると、「9月入学」の必要性が薄れてきたのか、再び「反対」が優勢に。世論もまた「熱しやすく、冷めやすい」を体現したのでした。
そもそも、この「9月入学」、コロナ禍で初めて議論されたものではなく、たびたび、検討されてきたものでした。
文部科学省によると、1985年以降、現在に至るまでに公開の場で検討されてきたのは、1987年「臨時教育審議会第四次答申」ですべての教育段階についてその始期を秋とすることを検討したものと、1998年「大学審議会答申」と2007年「教育再生会議第 二次報告」、2013年「学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議」などで、特に高等教育段階についてその始期を秋とすることを検討したものの、2つに大別することができるそうです。
数年に一度、議論されては消えていく――。「9月入学」はそういうものだ、ということです。
なぜ、検討されては消えていくのか。その理由のひとつが、国や地方の負担です。仮に9月入学が決めた場合、移行前の学年はプラス5カ月となるわけで、その分、教室や教員の確保に負担が生じます。さらに子どもを持つ家庭負担は総額2.5兆円という試算もあるうえ、保育園に通園する期間が長くなることで待機児童も増加するかもしれない、という昨今の沸騰ワードも足かせになっています。また9月入学実現のためには、企業の新卒採用や会計年度も9月にしたほうがいいなど、調整ごとも多数あり、毎回、議論は立ち消えとなっているのです。