株高は行き詰る可能性も…米ドル/円はどうなる?
今後、この株高・米ドル安の流れは続くのか考えてみたいと思います。NYダウの90日MA(移動平均線)からのかい離率を見ると、短期的な「上がり過ぎ」懸念がかなり強まっているようです(図表2参照)。
また、パウエル講演の示したインフレ率上昇への柔軟対応の方針を受け、長短金利差はスティープ化、つまり長期金利、米10年債利回りは大幅な上昇となりました。この結果、米10年債利回りに対するNYダウ益回りを比較したイールドレシオは、6月上旬以来の水準まで低下し、債券に対する株の優位性が後退しました(図表3参照)。
同じような水準までイールドレシオが低下すると、6月は短期的な「上がり過ぎ」の反動が入る形で、米国株はNYダウの場合、約1割の下落に向かいました。以上のように見ると、新たなFRB方針を受けた株高・米ドル安の流れも、比較的早い段階で行き詰る可能性も十分あり得ます。
では、株安へ転換したら、為替は米ドル高に戻るのでしょうか。
上述のように、6月に株安へ転換した局面では、ユーロ/米ドルなどは下落、つまり米ドル高に戻すところとなりましたが、米ドル/円は米ドル安・円高の展開になりました。株安、リスクオフ局面では、米ドルが買い戻されやすくなっていますが、伝統的には円も買われやすい影響があったのです。
以上から、株高でも株安でも当面、米ドル/円下落リスクの可能性が注目されることになるでしょう。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。