新型コロナの世界的な感染拡大以降、円以外の通貨に対して、米ドル安トレンドが続いてきました。しかし相場は上下動するものです。今後も米ドル安トレンドが続いていく場合、調整的な局面への対応を、どう考えるべきなのでしょうか。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「米ドル高・豪ドル安となったところでは、豪ドルは売るのではなく、さらに買い増す『押し目買い』の可能性もある」と述べています。今回は、米ドル安トレンドの調整局面への対応について解説します。

「8/17~8/23のFX投資戦略」のポイント 

[ポイント]

・「コロナ後」、3月末以降は円以外の通貨に対して米ドル安大相場が展開した。著名トレーダーも、対円以外の米ドル売り戦略を主軸にするケースが多かったようだ。


・米ドル安トレンドのなかの調整局面では、ポジション・データなどを参考にすると、ユーロは売り、豪ドルは「押し目買い」といった具合に、対応がわかれそう。  

 

調整局面、豪ドルは「押し目買い」?
調整局面、豪ドルは「押し目買い」?

米ドル/円小動きが例外、「コロナ後」米ドル安大相場

「コロナ・ショック」と呼ばれた世界的な株大暴落が一段落したのは3月末。それ以降の最大変動率を「高値/安値」で計算すると、米ドル/円は7%程度になります。高値は1米ドル=111円程度、そして安値は104円程度ですから最大7円程度下がったということになります。これは、ほかの主要通貨と比べるとかなり小幅です。別のいい方をすると、最近にかけての為替相場、米ドル/円から受ける印象ほど、小動きではありませんでした

 

たとえば、同じ計算方法でユーロ/米ドルの最大変動率を計算すると12%程度、さらに豪ドル/米ドルは28%程度です。こんなふうに見ると、「コロナ・ショック」が一段落した「コロナ後」は、ユーロ高、豪ドル高が大きく進み、その裏返しで米ドル安の大相場が展開していたことがわかるでしょう。

 

そしてそのなかでは、相対的に小幅な米ドル/円の値動きが、むしろ例外的だったといえます。このように、「コロナ後」は、米ドル/円のトレンドはわかりにくい展開が続きましたが、対円以外ではとてもわかりやすい米ドル安トレンドが展開してきました。

 

トレードの利益を追求する考え方の一つに、トレンドのある相場を選ぶということがあります。その意味では、「コロナ後」のFXトレードは、円以外の通貨に対して米ドルを売る、いい換えると、外貨の米ドルに対する取引をドルストレートと呼ぶので、ユーロ/米ドルなどドルストレートを買うトレードは、基本的には有効だったといえます。

著名トレーダー共通方針「トレンドのある相場を選ぶ」

机上の空論ではなく、FXトレーダーのなかでも、そのようなトレード戦略を展開してきたケースは少なくなかったようです。私は7月から、原則毎営業日(日本の祝祭日除く)の11時30分~11時45分に、為替情報を発信する番組「為替デイリーLIVE」を行っており(マネックス証券公式YouTubeチャンネル「マネックスオンデマンド」にて配信)、原則金曜日にゲストを招いています。

 

これまでに陳満咲杜さん、BULLヒロさんに各2回、そしてバカラ村さんに1回ご出演いただき、現在、そしてこの先のトレード戦略について、やりとりしてきましたが、「円以外の通貨に対して米ドルを売る」トレード戦略を主軸としたことが、おおむね共通していたのです。

 

日本のトレーダーにとって最も馴染があるはずの、情報量も多い米ドル/円がメイン、といったことは、上述の3名とやり取りするなかでは基本的にありませんでした。3名に共通したのは、「トレンドのある相場を選ぶ」というトレードの基本的な考え方への忠実な姿勢だったのです。

調整局面への対応は、何を手掛かりに考えるべき?

「コロナ後」、基本的には円以外の通貨に対してわかりやすい米ドル安トレンドが続きました。しかし相場は上下動するものです。米ドル安トレンドが、かりにこの先も続くとしても、調整的な局面への対応をどう考えたらよいのでしょうか。

 

今回は、ポジションを手掛かりにするという考え方を紹介したいと思います。

 

米ドル安トレンドが展開すると、基本的に米ドルを売り、米ドル以外の外貨を買うことになるわけですが、そのなかでもプロの投資家の代名詞のような存在、ヘッジファンドなどの取引を反映しているとされる、CFTC統計の投機筋のポジションを見ると、ユーロは対米ドルで過去最大の買い越しになっています(図表1参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表1]CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション (2017年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

これを見ると、さらなるユーロ買いは控え、むしろ当面ユーロは売りもありうるのではないでしょうか。

 

そんなユーロに対する以上に、この数ヵ月で大幅な米ドル安となったのが対豪ドルでした。ところが、少なくともCFTC統計の投機筋のポジションを見る限り、豪ドルは足元でも全く極端な買い越しとはなっていません(図表2参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表2]CFTC統計の投機筋の豪ドル・ポジション(2017年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

これを参考にするなら、米ドル安トレンドの調整局面でも、上述のユーロと豪ドルはトレード戦略が異なる可能性があるでしょう。つまり、米ドル安トレンドの調整、米ドル高・豪ドル安となったところでは、豪ドルは売るのではなく、さらに買い増す、「押し目買い」の可能性もあるのかもしれません。

 

こういったことを、チャート分析、それも細かいことではなく、大原則を参考にしながら投資判断する、それはまさに、私の基本的な考え方でしたが、上述のように7月から「為替デイリーLIVE」を始め、親交のあるトレーダーに改めてコメントを聞いても、全く違和感のなかったことは、新たな発見でした。

 

一方で、足元の一般的なFX取引シェアは、まだ米ドル/円が圧倒的に大きいようです。「馴染み」ではなく、「トレンドの有無」が、トレードの成否の分岐点の可能性が高いということは、まだ浸透させる余地が大きいといえます。
 

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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