お手軽・優秀な「カツラ」は、想像を絶する高額商品
以前の記事『「生えなかった…」被害女性続出、薄毛ビジネスのひどい実態』では、巷にあふれるヘアケア商品・サービスには発毛効果がないことを解説しました。このような薄毛ビジネスに関しては、実際にトラブルが起きることも決して珍しくありません。
まず多いのが、高額なカツラの販売にまつわるトラブルです。カツラ自体は非常に古い歴史を持つものとして認知され、愛用している人も大勢います。かぶったその瞬間に髪が増えて、好みの髪型にするのも思いのまま。昔も今も、薄毛対策に有効なアイテムのひとつです。
特に女性は、薄毛隠しではないおしゃれ用のウィッグなどにも親しみがあるので、カツラやウィッグをつけることに男性ほど抵抗感がないかもしれません。今は有名女優を起用した女性用ウィッグのCMも多く放送されているので、ますますなじみ深いものになっています。
ただし、カツラにはメリットがある一方、デメリットも数多くあります。それは後述することとして、ここでは薄毛ビジネスとしてのカツラの問題に触れておきます。
カツラそのものには問題はありませんし、カツラを売るビジネス自体が悪いのではありません。その販売方法に問題がある場合があるのです。
カツラの値段は頭を覆う面積によってさまざまで、平均すると50万円程度のものが多く、高いものでは100万円ほどの高価なものもあります。しかし、その実際の値段については不透明な場合が多く、広告などでは「1日●●円から」「1回●●●円」といった表現が目立ちます。
そもそもカツラは、とても手軽で薄毛隠しの効果の高いアイテムではありますが、使うにはとても高額なお金がかかります。
カツラは、一度だけ、ひとつだけ買ってOKというものではありません。メンテナンスをするときのために、ひとつではなく交代用にいくつか購入する必要があります。また使い続けるうちに古くなると、買い替えもすすめられます。すると数年で80万~100万円は軽くかかり、もし一生カツラをかぶり続けるとなると、その費用は莫大なものとなってしまうのです。
強引な勧誘と洗脳的なトークで気づけばローン地獄へ…
しかし、一般のユーザーにはそうしたからくりや、費用の総額がわかりづらく、実際にカツラを求めて店舗を訪ねて、初めてその高額さに驚く、といった場合がとても多いようです。
そこで「こんなに高くては無理」と断ろうとしても、カツラメーカーの営業のセールストークは巧みです。「こんなに素晴らしいカツラなら絶対に人にバレません。明日から人生が180度、明るく変わりますよ」などと心をそそるトークでカツラをすすめられます。それでも二の足を踏んでいると、強引な勧誘が何時間も続き、しまいにはそれが脅しのようになることすらあるといいます。
すると本人も「このカツラをつければ、薄毛の悩みにさようならできる。つけなければ、暗い人生のままだ」と思い込んでいってしまうのです。このようにして高額なカツラを売りつける販売方法は非常に問題があると思います。
こうして実際にカツラを買ってしまうと、高額なローン地獄に陥る人も少なくありません。国民生活センターによれば、発毛・増毛サロンやカツラの契約に関するトラブルについて寄せられた相談は、2008年度には1275件。金額は100万~500万円が192件で、500万円を超えたものも数件、3000万円というものまであります。
これだけのお金を払ったとしても、そもそもカツラは髪を増やすわけではなく、薄毛を隠しているだけ。育毛や発毛サロンに至っては、いくらせっせと通っても、ほとんど髪が増えることはありません。それなのに、いかに無駄なお金が支払われているかということです。
もし、カツラの購入を考えた場合には、ローンを組むそのときだけでなくメンテナンスも含めて、どれほどのお金が必要になるのかをまずよく考えることが大切です。さらに、マインドコントロール的ともいえる勧誘システムに惑わされないよう心がけることも忘れてはなりません。