高額なカツラを購入させる…巧妙な仕掛け「増毛法」
また、カツラについては、初めからカツラを売るのではなく、“増毛法”からつなげる販売システムも問題になっています。“増毛法”とは、自じ毛もうに人工毛を結びつけて髪を増やすもので、“結着増毛”とも呼ばれます。これは元からある自分自身の髪の毛に、人の手によって人工毛を結びつけていく方法です([図表]参照)。
この増毛法は施した直後はとても見栄えがいいのですが、1週間から10日ほど時間がたつと、見た目に問題が起きてきます。それは当然のことながら自毛が伸びてくるからです。自毛が伸びると、それに結びつけられた人工毛までがいっしょに浮き上がってきてしまうのです。こうなると、結ばれた毛同士が玉のようになって目立ったり、枝毛のように見えたりしてしまいます。
これではとても見た目が悪いので、また同じ増毛法を受けなければなりません。髪が伸びるごとにそれを繰り返していくので、それは終わりなき闘い。増毛サロンに通い続けなければならない面倒さに加え、当然、費用もどんどんかさみます。
デメリットはさらにあります。増毛法を行うと、人工毛を結びつけられた自毛に負担がかかってしまうのです。もともと健康だったはずの自毛はダメージを受け、切れやすくなってしまうこともしばしば。“増毛”で髪を増やすどころか、毛が傷められて減ってしまうわけです。これでは完全に本末転倒というものでしょう。
そんな苦労やショックの連続を経験した末、「もう増毛法はやめたい」と考える人が多いのは当然のことです。しかし…、そこからが本当の落とし穴です。
増毛法をやめたいと申し出た客に対して、メーカーが提案するのが、じつはカツラの購入です。「増毛法が合わないのなら、カツラがいいですよ」という言葉で、カツラをすすめるのです。
カツラをかぶることについては抵抗感がある人も少なくないし、購入を躊躇するほど高額な商品でもあります。そこで、いきなりカツラを売るのではなく、増毛からつなげていくわけです。
つまり、メーカーにとって、増毛法はカツラを売るための“仕掛け”や“誘導”に過ぎません。カツラ自体は悪いものではないとはいえ、こうした販売方法は非常に問題があると思うのです。
実際、国民生活センターには、こうしたカツラにまつわるトラブルや、育毛・発毛ビジネスに対する苦情などが多数寄せられているのが実情です。
元神 賢太
青山セレスクリニック(青山院・川口院) 理事長
船橋中央クリニック 院長