ひとりの税理士が相続税を扱うのは「1年で1~2回」?
成年後見制度とは、認知症などの影響で判断力が不十分で契約等の法律行為を行えない本人の代わりに後見人が必要な契約等を代理できる制度です。成年後見人には、親族もなれましたが、近年は司法書士や弁護士、社会福祉士など外部の専門家がなるケースも増えてきました。近年、親族の後見人が財産を使い込みしてしまう事件が多発した影響で、外部の専門家を後見人に選ぶケースが増えたといわれています。
外部の専門家が後見人になることで財産を守ることはできますが、管財資産額に応じた相応の報酬を支払わなければならないこともあり、金銭的負担はデメリットといえるでしょう。更に財産の処分などの自由度は大きく制限されます。
しかしこのケースでは、兄弟のいずれかに家族信託を任せると「争族」に発展しかねない状態でした。ならばいっそ、外部の専門家に財産を管理してもらう成年後見制度にした方が、双方の納得が得られると考えたのです。
さらに、お父さまの現在の意思能力を考えると、もはや遺言を書くのは難しいでしょう。「争族」が起きることを防止するため、このご家族には、「お母さまが元気なうちに遺留分に配慮した遺言をつくるべきです」とアドバイスさせていただきました。
争族を避ける対策⑦ 相続全般に詳しい専門家に依頼する
外部の専門家に依頼したために「争族」が起きてしまうケースは、実際によくあります。税理士などの比較的身近にいる専門家に相談するも、逆にトラブルになるケースが残念ながら意外とあるのです。
別に税理士さんに悪い人が多いわけでは全くないのですが、相続には税金が絡むことも多いため、税理士さんに依頼するケースが多くなりますが全ての方が相続に詳しいわけではありません。2019年現在、全国には7万8千人の税理士さんが活動していますが、年間の相続申告件数は全国で約10万件です。
つまり、ひとりの税理士さんが相続税を扱うのは、1年で1~2回しかないのです。これでは、相続に詳しい税理士さんが少ないのも無理はないでしょう。では、弁護士さんや司法書士さんなら安心かというと、これも一概には言えません。司法書士の先生は「遺言作成」や「相続登記」、弁護士の先生は「遺言作成」や「紛争事案」が専門なのです。