「争族」が起きたあとでは、もう遅い…
公正証書遺言を作成する公証人はどうでしょうか。公証人は遺言作成には非常にありがたい存在ですが、他はまた別です。つまり、「相続関係の仕事を誰かひとりにお任せして、すべてやってもらおう」という発想に無理があるのです。
相続にはさまざまな仕事や手続きが必要となるので、本来ならばそれぞれの専門家にそれぞれの仕事を頼むのがよい、ということになります。
しかし、多数の専門家に細かく仕事を切り分けて依頼し、全体のマネジメントを行うことは、それこそ素人には難しいでしょう。こうした事情を踏まえた上で、遺言の作成や財産の管理については、早めに「相続全般に詳しい専門家」に相談すればよいのですが……そんな都合のよい専門家をどうやって探せばよいのでしょうか?
1.相続税申告件数の多い税理士を選ぶ
2.それぞれの専門家が何に詳しいのかを知る
3.「争族」対策を熟知している相続の専門家を選ぶ
■「争族」は起きる前に防ぐしかない
私は、過去に数多くの「争族」の現場を経験してきました。その経験から導き出した結論は「『争族』が起きたら完全に解決することはない」ということです。
どれだけ均等に財産を分けても、全員が100%納得することはありません。誰かが納得しても、誰かが不満を抱きます。最後の手段は、家庭裁判所の審判ですが、その結果が出ても「不満はあるけれど裁判所に従うしかない」という諦めにつながるだけです。精神的なしこりは一生消えません。10年間会話がないとか、ほぼ絶縁状態という家族が少なくありません。
つまり、「争族」は起きる前に防ぐしかないのです。くどいようですが、その最も効果的な対策は遺言です。それぞれの事情にマッチした、もっとも効果的な遺言を作成する必要があります。このときの最大の悩みは「相続の内容を相談できる人がいない」ということです。配偶者がいれば相談できるかもしれませんが、子どもに相談するのは基本的にNGです。
なぜなら、遺言作成に関わっていた兄弟姉妹がいると後にバレてしまうと、それが「争族」の引き金になるからです。相談相手に困ったときは、遺された家族を守るために、相続の専門家に相談されることをお勧めします。
江幡 吉昭
一般社団法人相続終活専門協会 代表理事