新型コロナウイルスの感染拡大で日本人の働き方が大きく変わった。東京都の外出自粛要請に始まり、政府の緊急事態宣言が出され、多くの企業でオフィスワークを在宅勤務に切り替えるなど対応に追われた。出版業界も例外ではない。出版社もリモートワークが始まり、新しい働き方が模索されている。通勤するサラリーマンが減ったため、都心部の大型書店は休業を余儀なくされた。出版業界も撃沈かと思われたが、実はいろいろなことが起こっていた。新型コロナ禍の下での出版事情をレポートする。

ヒット写真集を手がけるのは大手出版社だけ?

当然、発売日には書店の前に長蛇の列。値段が4500円と高かったので、貧乏学生は何人かでお金を出し合って書店に走った。そんなわけで、中年以上の男性には「写真集‐宮沢りえ‐サンタフェ」という固定観念が刷り込まれている。

 

写真集といえば裸。「誰がどこまで脱いだか」という物差ししか持たない哀しい性ゆえに、露出度が限りなくゼロに近い『Sincerely yours...』は、ファッション誌かランジェリー広告にしか見えないはずだ。

 

田中みな実1st写真集『Sincerely yours...』(宝島社)
田中みな実1st写真集『Sincerely yours...』(宝島社)

横道にそれてしまったが、今年上半期の総合ベストセラー(20位以内)には、写真集がもう1冊入った。『乃木坂46写真集 乃木撮 VOL.02』は17位である。総合ランキングに写真集が2冊ランクインするのは稀有なことで、コロナ禍に翻弄された今年の出版界を印象づけた。

 

この写真集は、秋元康がプロデュースするいわゆる「坂道シリーズ(乃木坂46、欅坂46、日向坂46など)」の1つ。昨年はアイドル写真集が大ブレイクした。『生田絵梨花写真集 インターミッション』(講談社)が発行部数30万部、『日向坂46ファースト写真集 立ち漕ぎ』(新潮社)が14万部など、テレビの人気をそのまま出版に反映させた。

 

中でも、今年に入って火が付いたように売れたのが白石麻衣の2nd写真集『バスポート』(講談社)だ。累計発行部数50万部を記録し、しばらくの間、田中みな実と歴代3位争いを演じていた。

 

昨今の写真集は、講談社、新潮社、集英社、KADOKAWAと、版元も大手ばかりだ。紙だけでなく電子版も好調という。コミックス(『鬼滅の刃』)と同じように、年間トップになる可能性もあり得る。

 

さて、あれから30年、『サンタフェ』はどうなったのか。気になって、神保町古書店街で、アイドル写真集1万冊の在庫を誇る荒魂書店に聞いてみた。

 

「リアルタイムで買えなかった人や、昭和のアイドルが見てみたいという人、それとは別に中国・香港・台湾からの旅行者が篠山紀信作品ということで買っていったりして、今でも人気ありますよ。値段はきれいなもので2800円くらい」

 

だからと言って、ホコリをかぶった宮沢りえを引っ張り出して持ち込むのはおすすめしない。買取り値は200~300円程度。在庫は十分あるそうだ。

(一部文中敬称略)

 

平尾 俊郎
フリーライター

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