新型コロナウイルスの感染拡大で日本人の働き方が大きく変わった。東京都の外出自粛要請に始まり、政府の緊急事態宣言が出され、多くの企業でオフィスワークを在宅勤務に切り替えるなど対応に追われた。出版業界も例外ではない。出版社もリモートワークが始まり、新しい働き方が模索されている。通勤するサラリーマンが減ったため、都心部の大型書店は休業を余儀なくされた。出版業界も撃沈かと思われたが、実はいろいろなことが起こっていた。新型コロナ禍の下での出版事情をレポートする。

アイドルでも女優でもないアナウンサーの写真集

フリーアナウンサー、というか今では女優としての活躍も見せる田中みな実の1st写真集『Sincerely yours...』(宝島社/2019年12月発売)が、コロナ前に爆発的に売れた。

 

初刷部数が異例の12万部。予約が殺到し、発売前に重版が決定。その後も発売3日で3刷30万部、1カ月で50万部、1カ月半で累計発行部数60万部を超えた。写真集としては、宮沢りえ『Santa Fe』(1991年/朝日出版社)の155万部、菅野美穂『NUDITY』(1997年/インディペンデンス)の80万部に次ぐ歴代女性写真集発行部数第3位という。

 

昨年、写真集というジャンルが創設されたばかりの2020年上半期ベストセラー(日販調べ)においても、部門1位、総合5位にランクイン。出版業界はツボにはまったときの写真集のポテンシャルの高さを再認識することになった。

 

 

アイドルでも女優でもない、被写体としては未知数の田中みな実に白羽の矢を立てたのは、宝島社のカリスマ編集者・小寺智子氏。石原さとみの写真集『encourage』も手掛けた実力者で、2年間かけて田中を口説き落としたという。

 

その彼女が、インターネット総合ニュースサイトのインタビューに答えている。

 

「33歳という大人の女性ならではの柔らかさだったり、しなやかさだったり、可愛らしさだったり……。そんな、みな実さんの内側から溢れる美しさを“上品”に伝えたいと思い、この写真集を作りました」(j-castニュース・BOOKウォッチ取材より)

 

女性だけが知る女性の隠れた美しさ。売り場をのぞくと、購入するのは8割方若い“女性”。女性写真集の読者ターゲットは男性という固定観念を覆し、「美しくなりたい」「スリムなボティラインの持ち主になりたい」と願う同性の支持を得た。そういう意味で、写真集の新たな可能性を開いた記念すべき一冊となった。

 

1991(平成3)年10月13日。40歳以上の昭和生まれの男たちは、今もこの日の衝撃を忘れない。

 

朝起きて新聞(読売)を開いたら、当時人気絶頂の宮沢りえ(18歳)のヌード写真集『Santa Fe』(サンタフェ)の全面広告が、いきなり目に飛び込んできたからである。発売の1カ月前のことであった。

 

洋風の門扉の横に、全裸で壁にもたれるように立つ宮沢りえ。当代随一の人気タレントがヌードになることなどふつうはあり得ない。今でいうなら、新垣結衣(年齢は別にして)がいきなり素っ裸で出てくるようなもので、狂喜するより驚きの方が先だった。

 

カメラは篠山紀信。中途半端なセミヌードではなく、アメリカ・ニューメキシコ州の荒々しい自然を背景に、乳首やヘアを惜しげもなく晒している。あまりに衝撃的過ぎて、エロスの感情はほとんど湧いてこなかった。

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