仕事にだけ「うつ状態」という「怠け者症状」を病気とした背景

新型コロナウイルスの猛威は衰えを知らず、第2波、第3波の到来も危惧される状況が続く。この時勢、パンデミック客船「ダイヤモンド・プリンセス」の実態を告発した神戸大学医学部附属病院感染症内科・岩田健太郎教授が提言する「病の存在」は、まさに今議論されるべき事柄と言えるだろう。本連載は、岩田健太郎氏の著書『感染症は実在しない』(集英社インターナショナル)から一部を抜粋した原稿です。

統合失調症、不安障害、うつ病…すべては「現象」

精神疾患と呼ばれるものも実在せず、みな現象にすぎません。すべて、恣意的に定義され、決定された現象です。

 

統合失調症と呼ばれる精神科の病気があります。これはかつて精神分裂病と呼ばれていました。しかし、精神分裂病では聞こえが悪いので統合失調症に名前を改められました。「統合が失調する」という統合失調症だったら大丈夫な名前という発想も、私にはよくわかりませんが……。

 

不安障害、うつ病、躁(そう)病なども、「そういう症状をうつ病と呼びましょう」「こういう人がいたら躁病という病名を付けましょう」といった約束事で決めた恣意的な取り決めにすぎません。「いやいや、抗うつ薬という薬があって、うつは治るから、うつ病は実在する病気だ」と いう主張もあるかもしれません。けれども、薬物を投与すれば人間の体や精神に変調が起きるのはあたりまえで、そのような変化は病気でない(と認識された)人でも、病気になった(と認識された)人でも同様に起きます。だから、薬物療法で何かが起きた(例えば、病気が治ったと見なされる現象が起きた)ことは、病気の実在を証明しません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

最近、ディスサイミアという病気が注目されています。割と元気な軽症型のうつ病で、仕事はできないくらいつらいんだけど、夜のコンパは大丈夫……こんな感じで紹介され、議論の的となったようです。アメリカでは昔からディスサイミアという病気は「認識されていた」病気でした。ディスサイミアも恣意的に決められた病気です。

神戸大学病院感染症内科 教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター医療リスクマネジメント分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学病院感染症内科診療科長。著書に『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』(光文社新書)、『感染症は実在しない』(インターナショナル新書)、『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』(光文社新書)など多数。

著者紹介

連載「コロナは実在するのか」…感染症の第一人者が語る「病の存在論」

感染症は実在しない

感染症は実在しない

岩田 健太郎

集英社インターナショナル

インフルエンザは実在しない!生活習慣病も、がんも実在しない!新型コロナウイルスに汚染されたクルーズ船の実態を告発した、感染症学の第一人者が語る「病の存在論」。検査やデータにこだわるがあまり、人を治すことを忘れてし…

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