母親が公正証書遺言を遺していたにもかかわらず、兄(長男)と妹(長女)が「争族」に発展してしまったケース。放蕩息子だった兄は母の生前、散々迷惑をかけてきたこともあり、遺言には財産の大半を妹に遺すと記されていました。自分の相続分がわずかな現金だけだと知った兄は激怒し、自らの遺留分を確保するため奥の手を使った。 ※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏の書籍 『プロが教える  相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

金が生んだ悲劇。妹は兄を母親の3回忌にすら呼ばず…

遺留分を払い終えることで「争族」は一段落しましたが、それ以降、この兄妹はほぼ口を利かなくなってしまったのです。小百合さんは、目と鼻の先に住んでいる兄を、母親の3回忌にも呼びませんでした。

 

一度「争族」が起きてしまうと、金銭的な解決はできても、そのときに刻まれたしこりが消えることはありません。だからこそ、「争族」は起きる前に防ぐことが大事なのです。

 

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■遺留分に配慮しない遺言は「争族」を引き起こす

 

このご家族の場合、美枝子さんが公正証書遺言を作成していたにもかかわらず、「争族」を避けることができませんでした。残念ながら、このようなケースも多々あります。

 

したがって、私が相談を受けた際には必ず「遺留分に配慮した遺言をつくるべき」とアドバイスを差し上げています。仮に財産を渡したくないお子さまがいたとしても、法律で定められた遺留分だけは渡すよう記載することで、余計な「争族」を回避できるからです。

 

「しっかりと相続対策」が裏目に…
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実はこのご兄妹には後日談があります。

 

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紆余曲折を経ながらも、2年以上前に相続手続きが完了したにもかかわらず、急に私の出番が訪れたのはなぜか。それは、「更正の請求」が発生したからです。

 

相続の際には当然、相続税が発生しますが、その算定方法は難しく、専門の税理士の力を借りても、ときには「税金の納めすぎ」が起こります。

 

しかし、税金を納めすぎていたことに後から気づいた場合、減額更正をすることで税金が還付されます。これが「更正の請求」といわれる制度です。

 

今回の事例で、小百合さんは広い土地を相続しましたが、相続税を申告した際の土地の評価額が過大であったため、土地評価の減額要因(土地が広い、道路幅が狭い、傾斜地、間口が狭いなど)を複数使うことで、土地評価額が下がりました(正確に言うと、評価額が下がったわけではなく元の評価が高すぎただけですが)。これによって、彼女は相続税の一部を取り戻すことができたのです。

 

小百合さんのケースでは、更正の請求によって1000万円近くの相続税が戻ってきたのです。この相続税を取り戻す過程で、小百合さんと義弘さんは少し関係を修復することができました。

 

と言うのは、税務署が「減額更正は兄妹そろって請求をしてください」と求めてきたからです。

 

小百合さんは義弘さんと口も利きたくなかったので、当初はひとりで更正の手続きをするつもりでしたが、税務署がそう言ってくる以上、仕方ありません。

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江幡 吉昭

アスコム

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