金融危機の局面において資産価値の下落を抑えるためには、戦略的なポートフォリオ構築が欠かせません。本連載では「10の投資」にスポットを当て、それぞれ具体的な活用法を見ていきます。

サイクル性資産と非サイクル性資産とは?

金融危機の局面においては、一斉にリスクのある資産が売られるので、その中でいくら分散していても、ほとんど意味がありません。では、一体何と何を組み合わせれば、資産価値の下落を抑えられるのでしょうか。

 

それを説明するにあたって、筆者がいつもお話ししているのは「サイクル性資産」と「非サイクル性資産」への分散です。どちらも筆者が創った言葉なのですが、私はそれぞれを、次のように定義しています。

 

●サイクル性資産……原則として、景気の変動(サイクル)に連動して値動きするもの
●非サイクル性資産……値動きが景気の変動にあまり左右されないもの

 

サイクル性資産と非サイクル性資産を組み合わせれば、自動的に値動きの違う商品を保有していることになるといってよいでしょう。

 

さらに、資産のポートフォリオを組むときの大原則は、ペーパー資産と実物資産(下図)を組み合わせることです。ペーパー資産の中には、当座の生活費などとして必要な預貯金も含めて考えてください。

預貯金にしておくことは運用とはいえませんが、いうまでもなく、ある程度は必要です。ただし、どのくらい預貯金を持っておくべきか――については、「人それぞれ」というほかありません。というのも、たとえば預貯金が1000万円あったとして、一般的な収入の人にとっての預貯金1000万円と、たとえばお医者さん・歯医者さんといった収入が高い人の預貯金1000万円では、「持つ重み」が大きく異なるからです。

 

高収入で、かつその状態が今後長期間にわたって維持できるなら、一般的にはある程度、運用に積極的になっても問題ないでしょう。

リスクの高い長期投資は、苦痛を伴う

しかし、そこまで収入が多くない場合、教育費や住宅購入資金など、将来必ず使う、目減りさせてはいけないお金は、決してリスクにさらさず、元本割れしない預貯金として保全しておかなければなりません。

 

必要なお金が確保できていない、確保できるかどうかもわからない状況で、ハイリスク投資に資金をつぎ込むのは危険です。ハイリスク商品でも、資産運用というのは原則として長期で行うものですから、一時的に損失は出ても、やがて修復して大きな利益を生み出せる――たしかにこのような考え方もあります。

 

それはたしかに間違いではありません。ただし、長期で保有している間には、何度となく大きな価格変動を経験することになるでしょう。そのときのハラハラ感に、長年にわたって付き合っていくのは、かなりの苦痛が伴うはずです。

 

よく「長期投資は手間がかからないし、持っていることを忘れてしまえば気がラクだ」という意見も聞きますが、果たして本当に持っていることを忘れてしまえるのでしょうか。少なからず資金を投じていれば、その対象がどのような値動きをしているのか、どうしても気になってしまうものではないでしょうか。

 

それに、ほとんど手間をかけず、長期の運用を成功させるというのも、現実には難しいでしょう。運用もあらゆる労働と同じで、手間をかけず簡単に儲けられるほど甘くはありません。手間をかけず、ただ放置しておいた結果、たとえば子どもの進学などのタイミングで、損失を出している金融商品を売却するといったことにもなりかねません。そのように考えると、将来絶対に必要なお金を運用に投じるのは、無謀といえるでしょう。

「10の投資」で資産を防衛しながら少しずつ殖やす

大原則は、実物資産とペーパー資産に分散させることですが、それぞれの投資対象は多岐にわたっています。まず、ポートフォリオの「1階部分」に当たる実物資産に関していうと、筆者は次の投資先を推奨します。

 

【実物資産】
①実物の不動産
②貴金属(おもに金の地金)
③クラシック・コイン
④その他(美術品・クラシック切手など)

 

続いて「2階部分」に当たるペーパー資産は、適切な額を預貯金とし、残りをサイクル性資産と非サイクル性資産に分散します。サイクル性資産と非サイクル性資産は、それぞれ次の金融商品を推奨します。

 

【ペーパー資産 〜サイクル性資産〜】
⑤株式ETF
⑥コモディティETF
⑦債券ETF

【ペーパー資産 〜非サイクル性資産〜】
⑧ヘッジファンド(マネージド・フューチャーズなど)
⑨インフラ事業投資(MLP)

 

最後に、これは一般の投資家には無関係ですが、富裕層向けの注目すべきサービスとして、
⑩プライベート・バンク

をおすすめしたいと思います。

 

これらを組み合わせれば、資産を防衛しつつも、ある程度リターンが期待できるポートフォリオを組むことができます。さて、次回からは、これら「10の投資」について見ていきましょう。

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    本連載は、2013年12月19日刊行の書籍『日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    日本が財政破綻しても 資産を奪われない10の投資

    日本が財政破綻しても 資産を奪われない10の投資

    田中 徹郎

    幻冬舎メディアコンサルティング

    日本の財政は深刻な事態に陥っており、「財政破綻」も決して非現実的なシナリオではありません。特に、資産を円建ての現預金や国債などのペーパー・マネーに集中させていれば、その損害は計り知れません。財政破綻によって、円…

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