家族と同居する人の満足度が低いのは、人間関係がうまくいかなかったり、コミュニケーションがとれなかったりするからです。その点、ひとり暮らしなら、体調が悪いときでも、家族に遠慮したり、気兼ねしたりする必要がありません。病院通いはしていたとしても介護が必要な状態ではなく、親しい友人や親戚が何人かおり、年金では充分でなくても日々の生活に困るほどではなく、自分の自由気ままに暮らせるのであれば、ひとり暮らしは幸せなはずです。
内閣府の別の調査によれば、高齢者の多くが普段の楽しみとして挙げたのは、「テレビ、ラジオ」「仲間と集まったり、おしゃべりをすることや親しい友人、同じ趣味の人との交際」「新聞、雑誌」「食事、飲食」でした。これら4つは、ひとり暮らし、夫婦ふたり暮らし、子や孫との同居のいずれにおいても人気が高く、暮らし方による大きな差異は見られませんでした。高齢になって楽しく生活できるかどうかは、ひとり暮らしかどうかとは別の問題なのです。
「ひとり暮らし高齢者」は少数派ではない
昔は、年をとったら子や孫と暮らすのが当たり前とされていました。ところが今や高齢者の暮らし方は、ひとり暮らしのほうが当たり前になりつつあります。政府の統計では、65歳以上の人がいる世帯のうち、子や孫と一緒に暮らしている割合は1980(昭和55)年には50.1%と半数を占めていましたが、2014(平成26)年には13.2%にまで減少しています。
一方、ひとり暮らし世帯の割合は25.3%と4分の1を超えました。2014年時点で、596万人近い高齢者がひとりで暮らしており、65歳以上のおよそ6人に1人がひとり暮らしということになります。ちなみに国立社会保障・人口問題研究所の2014年推計によると、2035年には、東京では高齢世帯の44.0%がひとり暮らしになるそうです。
ひとり暮らし高齢者は少数派ではないどころか、将来ひとり暮らしになる可能性は誰にでもありうることなのです。
昨今、ひとり暮らし高齢者が急増していますが、その背景には配偶者がいない人の増加があります。つまり、結婚しない人、離婚する人が増えたということです。
50歳時点で一度も結婚経験がない人の割合を示す50歳時未婚率は、2010(平成22)年には男性で20.14%、女性で10.61%あり、1990(平成2)年以降、特に男性の50歳時未婚率が急増しています。その結果、急増した未婚男性が10年ほど前から続々と高齢者の仲間入りを始めました。
未婚の高齢者のなかには、ひとり暮らしをしている人は少なくないはずです。50歳以上で離婚する人も1990年以降、急激に増えています。特に1990年から2000年までの10年間の増加率は300%近くもあり、熟年離婚の増加はここ20年間の新しい傾向といえます。
小谷みどり
シニア生活文化研究所代表理事