遺産の行方は…?兄弟が迎えた「最悪すぎる結末」
千恵子さんが危篤だと知ってから相続に関する情報を調べはじめ、自分にも法定相続の権利がある可能性に気付き、相続の主張を始めたのでしょう。
この兄弟はその後、弁護士を交えて何度も話し合いを重ね、最終的に千恵子さんが遺した財産の半分を雄一郎さんに相続させるという結論に落ち着きました。しかし、一度壊れてしまった兄弟の仲が修復されることはありませんでした。その後、雄一郎さん夫婦と、誠二さん夫婦の関係まで悪化し、相続の一件以来、千恵子さんの法要も別々に執り行うことになったのです。
このように一度「争族」が起きてしまうと、金銭面で解決することはあっても、遺恨が消えることはありません。
今回のケースで「争族」を防ぐ方法は、遺言に「弟に介護の面倒を見てもらったので自宅や現金はすべて弟に相続させたい。
兄は大阪にいて、本人も遺産をいらないと私に言っていたので納得してください」という内容を付言事項に記載しておけば、トラブルになる要素はまったくなかったでしょう。
遺言には、いくつか記載のルールがあります。そこには、財産分割に関する記載以外に「付言事項」という被相続人の想いを書き込める項目が用意されているのです。
付言事項はしょせん「想い」ですから、そこに書かれた内容に特段の法的効力はありません。しかし、財産をもらえない人や、多めに分割する人がいる場合は、「争族」を避けるために、その理由を付言事項に書くことをお勧めします。亡くなった人の言葉というものは、遺された家族にとって、やはり重いのです。
多くの場合、「納得できない」という感情が「争族」の引き金になりますから、「家族が納得できる理由」をあなたの言葉で書くことで、かなりのもめごとを回避できるのです。
この事例の家族のように、定年退職や病気で経済状況が大きく変わったことで「前言撤回」される方はしばしばいます。繰り返しになりますが、どのような家族も「争族」になり得ることを忘れないでください。