「経営者意識の意識改革」謳う書籍は多いが…
そして、その相違点について論文内にて説明する必要があります。私の論文研究の目的から、次のような要件を備えた先行研究を調べました。
① 中小企業の経営再生のための論理的な展開ができている研究
② 社長の経営者意識、その中でも社長の持つ危機意識という内面的特性の評価を定量化し、分析している研究
③ 社長の経営に対する取り組みに関する情報や資料を、単にアンケートなど調査対象から申告を受けて収集するにとどまらず、社長や会社の実態を把握できる情報・資料が背景にある研究
④ 課題の指摘をするだけではなく、どのようにして社長の意識や会社の行動を変革させるかにつながる研究
経営者を読者対象にした、社長の経営者意識を改善する必要性を説いている経営書は山ほどあります。しかし、上記の要件から考えると、社長がどのようにして経営者意識を改善し、その経営者意識が経営再生にいかに影響を及ぼすのか。それらの関係を論理的に分析し、根拠ある理論に基づいた先行研究はないのです。
また、私の研究目的に関連するかもしれない学術的な先行研究が200件くらいピックアップできました。そして、その内容について一件一件調査・検証しました。それぞれについては、博士論文中にて私の研究論文の主旨との違いを証明しましたが、本連載でその内容を具体的に説明するのは、主旨と異なりますので省きます。
結果だけをまとめて申し上げますと、私の論文が目指すような経営者特性、なかでも社長の持つ危機意識を定量的に把握した研究。効果的な施策によって収益改善につなげるための具体的手法を研究する先行研究は、まったく存在しませんでした。つまり、私のこの博士論文の研究は、この世でオンリーワンの独創的な存在であると証明できたのです。
【つづく】
吉岡 憲章
未来事業株式会社 代表取締役