もはや国の台所も火の車である
お金についての悩みの多くは「老後の暮らし」にまつわる問題です。若いときはまだよいのですが、年老いてくると誰しも不安が募るものです。「年金はまずもらえない」、もしくは「かなり目減りして支給されるはず」と腹をくくっておいたほうが賢明です。その理由は「ねんきん定期便」を見るとわかります。
「ねんきん定期便」とは、社会保険庁(現・日本年金機構)が2009年4月から実施した公的年金の保険料納付実績や将来受給できる年金額の見込みなど、年金に関わる個人情報を、国民年金・厚生年金保険の被保険者に郵便で発送する通知書のことです。サラリーマンの方は「厚生年金」、個人事業主の方は「国民年金」と分かれています。
私は自分自身が将来受給できる「年金見込額」を、「ねんきん定期便」で確認したところ、そのとき大きな疑問が浮上しました。将来もらえるはずの「年金見込額」が予想とは異なり、あまりに少ないのです。私は過去に、大手製薬メーカーと一部上場の化学メーカーと、2社の大企業に勤務した経歴があります。サラリーマンを辞める頃、年収は1000万円を超えていて、厚生年金の支払額も毎月5万円以上は天引きされていたはずです。
ところが、「ねんきん定期便」に記されていた「年金見込額」は、なんと月額17万円ほどだったのです。さらに言うと、これは現段階での試算額なので実際に年金を受給するときには、もっと少ない金額になりかねません。私たちは「国民年金保険料を支払わない」という選択はできないようになっています。
近年、国民年金を未払いの方には支払いが督促され、一定期間を超えても未納の場合には銀行口座などが差し押さえられ強制的に徴収されるようになりました。そこまで徴収が徹底的に行われるようになったということは、「国の台所も火の車である」という事実の裏返しです。
国民年金を満額受給している夫婦2人の場合
また、「老後破産」の危険性も知っておかねばなりません。老後破産とは、生活保護を受けずに、年金だけでギリギリの生活を続けていて、病気や介護が必要になった途端に生活が破綻してしまう状態のことです。これから大きな社会問題となる恐れがあるのです。
この問題の怖いところは「特別な状況にある人が高リスク」というわけではなく、「預貯金をある程度蓄えているごく普通の人までも陥る可能性がある」という点です。いったいどうなると「老後破産」に至るのか、国民年金を満額受給している夫婦2人の世帯で試算をしてみます。
◇第1段階……国民年金の満額受給額は、1人当たり月6万5000円、2人合わせて月13万円。
この場合、持ち家でも賃貸でも、何とかギリギリ生活できる程度です。
◇第2段階……夫が亡くなったとき。妻が1人の場合、妻の受給額は月6万5000円。
それとは別に、「遺族基礎年金」が支払われる可能性があります。これは国民年金に加入している人が死亡した場合に、その死亡した人によって生計を維持されていた「子どものいる妻」、または「子ども」に支給される年金であり、「子どものいない妻」には支給額が0円となります。
この場合、月に10万円を切るような生活となりますが、生活費が「ちょうど半分」になることはないはずです。妻の暮らしは「夫婦2人で生活していたとき」よりも、さらにカツカツの生活となります。
◇第3段階……妻が病気になったとき。
通院や入院をすると、莫大なお金が必要です。月6万5000円の受給となる毎月の生活費が赤字になり、預貯金を食いつぶす生活となります。
◇最終段階……赤字生活が毎月続くようになると、破産へのカウントダウンが始まります。
この夫婦に300万円の預貯金があるとすると、毎月3万円の赤字生活なら100カ月後、つまり約8年後には預貯金額はゼロになり、「破産」です。「破産する前に生活保護を申請して受け始めておく」という手もありますが、持ち家だったり、預貯金残高があると受けられません。
これは一例にすぎませんが、年金受給額は将来的にはもっと少なくなる可能性もあり、ごくごく平均的な収入のサラリーマン世帯でも、老後破産は十分に起こり得るのです。ここでは夫婦2人のシミュレーションをご紹介しましたが、これがシングル女性の場合なら、さらに恐ろしい現実に直面するはずです。