世界的に超低金利時代へ突入している。そんな状況下、新型コロナウイルスの感染拡大で、事態はまさに「打つ手なし」。しかし、ここにきて注目されているのがMMT(現代貨幣理論)である。有識者から袋叩きにあい、さらにネット上でも支持派と否定派が議論を繰り広げている。MMTは救世主なのか、トンデモ理論なのか。本連載は、経済アナリストの森永康平氏の著書『MMTが日本を救う』(宝島社新書)を基に、MMTとはどんな理論なのかをわかりやすく解説していく。過去の著書には父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)がある。

日本はMMTの正しさを証明した?

森永康平著『MMTが日本を救う』(宝島社新書)
森永康平著『MMTが日本を救う』(宝島社新書)

財政赤字が多いため財政出動はできない。減税もできない。金融政策はこれ以上金利を下げられず、打てる手が限られている。このような手詰まり感がある中で、MMTに注目が集まったのだろう。日本は変動相場制を採用しており、円という自国通貨を発行できるわけだから、債務残高を気にすることはないというMMTに基づけば、財政政策には十分の余地があることになる。

 

しかし、日本の債務残高の対GDP比は17年時点で235%であり、このような財政状態で更に財政出動をすれば、金利が急騰する可能性や、ハイパーインフレが起こることを指摘する意見が出てくるはずだ。前出のMMTに光を当てた2人の女性のうち、MMT提唱者の経済学者・ケルトン教授は過去にインタビューの中で「債務残高の対GDP比は、長いこと 90%という水準が公的債務の持続不可能になるポイントと言われていたが、その数字が100%、200%と変わっていき、日本は既に200%を超えているが何も起きていない」と指摘している。

 

たしかに、これまで見てきたデータからもわかる通り、世界的に見て日本の債務残高の対GDP比は非常に高いが、一方で金利も物価も低いままである。従来の定説からすれば、現在の日本の状況は説明がつかない。

 

それでは、日本は既にMMTを実践していたことになるのだろうか。ケルトン教授に言わせれば、日本の現状はあくまでMMTを実証したというだけであり、実際にMMTを基に政策をとっていれば、より高い成長率を実現していたと言っている。

 

※使用されているデータは執筆された2020年3、4月時点のデータです。

 

森永 康平

金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO

経済アナリスト

 

MMTが日本を救う

MMTが日本を救う

森永 康平

宝島社新書

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