日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、不動産にまつわる相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

解説:相続人に対して「遺留分侵害額請求」ができる

手厚いサービスのある施設とはいえ、年間360日も顔を出しておいて遺産をまったく相続させないのは、ひどいと感じる方も多いでしょう。

 

事例の場合、D子さんは他の相続人に対して遺留分侵害額請求をすることができます。D子さんの遺留分は全体の8分の1ありますので、その金額に達するまでの金銭を、他の相続人から貰うことができます。

 

「70歳になるころに事業承継を完了」とあるので、会社の株式は生前贈与が行われていると読めます。そしてその3年後に亡くなっていることを踏まえると、遺留分の計算において、亡くなった時の遺産に、生前贈与した株式も足し戻して計算することができます(これを「特別受益の持戻し」といいます)。遺留分の計算上、原則として過去10年以内に行われていた生前贈与は、特別受益の持戻しの対象とされています。

 

なお、遺留分に持戻される株式の評価額は、贈与時点の価格でなく、相続時点の価格になるので、会社が成長すればするほど、遺留分の金額が大きくなるというジレンマに悩まれる経営者の方は世の中にたくさんいらっしゃいます。そういった方のために、「遺留分に関する民法の特例」という制度があります。

 

遺留分の精算は、2019年7月より、現物ではなく金銭で行うことを原則とするように民法が改正されました。ただ、金額にも寄りけりですが、精算できるだけの金銭がなければ、やむを得ず現物(会社の株式等)での精算も認められます。ここで注意が必要なのは、民法的に現物の精算はOKなのですが、税務上は、遺留分の精算を現物で行うと、その現物を売却したものとみなして、所得税(譲渡所得)が発生することになります。場合によっては、相続税と所得税のダブルパンチになりますので、注意しましょう。

 

あと気になったのが、3人の兄弟で会社を経営していくことについてです。兄弟とはいえ、大人になれば考え方や価値観が異なってきますので、ちょっとしたすれ違いが、幼少期からのうっぷんに繋がり、大喧嘩になってしまうケースが非常に多いので、将来の会社経営も少し心配ですね。こういった場合は、兄弟に平等に権利を与えるよりも、誰か一人に権利(株)を集中させ、他の兄弟はサポートに徹するくらいの方が案外うまくいくのかなと思います。

 

 

【解説者が「遺留分」について、動画でわかりやすく解説】

 

橘慶太
円満相続税理士法人

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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