父からの遺言書…読み終えた後、長女に異変が
それは葬儀のあと、久しぶりにきょうだい全員が揃ったときに起こりました。「全員揃うことなんてめったにないんだから」とNさんも誘われ、Aさんの自宅で会食をすることになりました。
Bさん「この家に来るなんて、何年ぶりだろう」
Cさん「親父が施設に入る前のことだから、かれこれ、5年ぐらい前か」
D子さん「あら、私は毎週のように来てたわよ。ちゃんと掃除しないと、家ってすぐ痛むんだから」
Eさん「だから、この家こんなにキレイなのか。ありがとう姉さん」
和やかな雰囲気のなか食事をしていると、BさんがAさんから遺言書を預かっている、と話しだしました。
Bさん「本物は役所にあるんだが、その写しを預かっているんだ。きょうだいが集まったときに読んでほしいと」
そしてBさんは遺言書を読み始めました。そこに書かれていたのは、以前、家族で話しあって決めたという遺産分割について。Cさん、Eさんに向けて、会社を頼むという言葉が綴られていました。
Cさん「もっと、がんばらないとな」
Eさん「そうだな」
父の言葉にしんみりしていたところ、D子さんの表情がどんどん曇っていくように感じたとN子さん。そしてⅮ子さんは、突然立ち上がっていいました。
D子さん「やっぱり、わたし、この遺産分割、納得いかない!」
全員「えっ!?」
D子さん「私だけ何ももらえないなんて、不公平じゃない!」
Bさん「いや、前に家族全員で決めたことだろう。何をいまさら」
D子さん「とにかく、私は認めないから!」
全員「ちょ、ちょ、待てよ!」
そう言い残し、D子さんは家を出ていってしまいました。Nさんはその時のことを振り返ります。
「Aさんの遺言書、あれは余計なものでしたね。子どもたちのなかで、D子さんへの言葉だけ、なかったんですから。この5年間、毎日のように施設に顔出したり、誰もいない家を掃除したり……あれじゃ、Ⅾ子さん、かわいそうですよ」