日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、不動産にまつわる相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

父からの遺言書…読み終えた後、長女に異変が

それは葬儀のあと、久しぶりにきょうだい全員が揃ったときに起こりました。「全員揃うことなんてめったにないんだから」とNさんも誘われ、Aさんの自宅で会食をすることになりました。

 

Bさん「この家に来るなんて、何年ぶりだろう」

 

Cさん「親父が施設に入る前のことだから、かれこれ、5年ぐらい前か」

 

D子さん「あら、私は毎週のように来てたわよ。ちゃんと掃除しないと、家ってすぐ痛むんだから」

 

Eさん「だから、この家こんなにキレイなのか。ありがとう姉さん」

 

和やかな雰囲気のなか食事をしていると、BさんがAさんから遺言書を預かっている、と話しだしました。

 

Bさん「本物は役所にあるんだが、その写しを預かっているんだ。きょうだいが集まったときに読んでほしいと」

 

そしてBさんは遺言書を読み始めました。そこに書かれていたのは、以前、家族で話しあって決めたという遺産分割について。Cさん、Eさんに向けて、会社を頼むという言葉が綴られていました。

 

Cさん「もっと、がんばらないとな」

 

Eさん「そうだな」

 

父の言葉にしんみりしていたところ、D子さんの表情がどんどん曇っていくように感じたとN子さん。そしてⅮ子さんは、突然立ち上がっていいました。

 

D子さん「やっぱり、わたし、この遺産分割、納得いかない!」

 

全員「えっ!?」

 

D子さん「私だけ何ももらえないなんて、不公平じゃない!」

 

Bさん「いや、前に家族全員で決めたことだろう。何をいまさら」

 

D子さん「とにかく、私は認めないから!」

 

全員「ちょ、ちょ、待てよ!」

 

そう言い残し、D子さんは家を出ていってしまいました。Nさんはその時のことを振り返ります。

 

「Aさんの遺言書、あれは余計なものでしたね。子どもたちのなかで、D子さんへの言葉だけ、なかったんですから。この5年間、毎日のように施設に顔出したり、誰もいない家を掃除したり……あれじゃ、Ⅾ子さん、かわいそうですよ」

 

やっぱり、そんな遺言書、認めたくないわ!
やっぱり、そんな遺言書、認めたくないわ!(※画像はイメージです/PIXTA)

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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