日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、不動産にまつわる相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

介護施設に入居した父…長女は毎日のように顔を見せに

結局、D子さんの誤解も解けて、無視されることはなくなったというN子さん。父とD子さんの関係も修復し、Aさん一家は、徐々に母のいない暮らしに慣れていきました。

 

そしてAさんが還暦を迎えたころ、ほかの会社に就職していたBさんとCさんが、Aさんの会社に転職してきました。事業承継を考えて、家族で話し合って決まったとのこと。さらに数年後、大学を卒業したEさんもAさんの会社に就職。子どもたち3人が次期経営陣として、徐々に会社を任されるようになっていきました。

 

一方、子どもたちの中で唯一Aさんの会社に関りがなかったのが、D子さん。大学卒業後、一時、海外に留学。そこで知り合った男性と結婚していたこともあり、Aさんの会社との縁はありませんでした。

 

そしてAさんが70歳になるころには、事業承継も完了。しかしちょうどそのころ、Aさんは足腰を悪くして、介護施設に入ることになりました。

 

「旦那様が施設に入ることになり、家政婦としての私の役目はそこで終わりました。でも20年以上も家政婦をしていたので、そのあとも、Aさん一家とは家族のような関係でしたね」

 

Aさんが入居した施設は、手厚い介護で評判のところ。家族の負担はまったくなく、本人も家族も安心していられる施設でした。それでもD子さんは毎日のように施設に通いました。

 

「お兄さんや弟さんは仕事で忙しいから、なかなか顔を見せることができないでしょ。評判のいい施設だからって『家族が顔を出さないと、お父さん、かわいそうでしょ』って。365日中、360日は顔を見せていたようですよ」

 

そして、Aさんが施設に入ってから数年後、子どもたちを集めて、相続の話をしたときがあったといいます。

 

「Aさんから『遺産は基本的にBさん、Cさん、Eさんで分けるようにしたんだ』って聞きました。会社の経営なんて、いつ何があるか分からないから、経営陣の3人で、という判断らしくて。D子ちゃんも納得してのことだと聞きました」

 

それから3年後、Aさんは亡くなりました。

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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