「600万円も節税」聞こえは良いが実際のところは…
相続争いの原因は、遺産の量が多いということよりも、どちらかというと分けにくい遺産の有無が関係している場合が多く、そうした遺産が一つあるだけでいとも簡単に引き起こされてしまうものなのです。
実際、統計でも遺産額が少ないほど相続争いが多いという結果が出ています。親から引き継ぐ遺産、特に土地などは形見のようなものだといえるでしょう。遺産に思い入れがあるほど、逆にトラブルというのは深刻化しやすいものなのです。
だからこそ「土地の共有」は、相続争いの温床になりやすいのです。時期を見て良い値で売り払う、などの経過を事前に両者合意の上で取り決めていない限りは、遺産の共有は避けましょう。
養子縁組(1) 養子縁組で基礎控除額が増える
昔から相続税の節税対策として使われている「養子縁組」についても解説しておきましょう。養子縁組による節税とは、「法定相続人」を増やすことで、相続税の基礎控除額を引き上げる方法を指します。
法定相続人とは、被相続人の相続が起こった際に、「遺産を相続する権利のある人」のことをいいます。法定相続人には、養子縁組の子も含まれます。ただし、法定相続人に含むことのできる養子の人数には制限があり、実子(相続人と血縁関係あり)がいる場合は一人まで、実子がいない場合は二人までと定められています。
例外として、特別養子縁組(適切な環境におかれていない乳幼児が、別の家庭で育てられることが目的)という制度もあります。また、再婚相手の連れ子などの養子は、実子として扱われるので人数の制限はありません。
法定相続人が増えれば、一人につき600万円の基礎控除額が増えます。また、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が、法定相続人一人につき500万円ずつふえます。ちなみに以前は基礎控除額が1000万円でしたから、資産家にとっては今よりも魅力的な節税対策だったわけです。
養子縁組(2)法定相続人を増やすというリスク
相続対策の本で、養子縁組にリスクがあると書かれているものはあまり多くありません。なぜなら、例えば私のような税理士がこういうことを声を大にして言ってしまえば、自身のお客様さまを減らすことにつながってしまうのは事実だからです。ですがここでは、あえてあまり言及されていなかった養子縁組のデメリットについてお話をしたいと思います。