「8/3~8/9のFX投資戦略」のポイント
【ポイント】
・先週の米ドル/円は一時104円割れ寸前まで急落。やはり、長期三角保ち合いブレークの影響は大きかった可能性。
・ただ、この間米ドル安を主導してきたユーロ/米ドルはそろそろ反動が入りそう。米ドル/円もそれに連れて、保ち合いの下放れが「ダマシ」になるかが注目点。
保ち合いブレーク後のパターン通り=先週
先週の米ドル/円は、一時104円割れ寸前まで一段安となりました(図表1参照)。
先々週、米ドル/円は106円を下回り、2015年から続いてきた長期三角保ち合いを「下放れ」したようになっていました(図表2参照)。
このように、長期三角保ち合いをブレークしたケースは、今回の米ドル安方向だけでなく、米ドル高方向も含めて、今年これまで何度かありましたが、いずれもブレークした方向に一段と大きく動くところとなりました。以上から見ると、先週の米ドル/円急落も、今回も長期保ち合いブレークによる影響がやはり大きかったのではないでしょうか。
これまでの保ち合いブレークは、短期的に行き詰り、いわゆる「ダマシ」を繰り返してきました。今回もチャートのブレークも、直後のこのような活発な値動きの割には「ダマシ」に終わり、106円を回復し、保ち合い内に戻ってしまうのでしょうか。それとも、いよいよ100円割れといった米ドル一段安に向かうのでしょうか。
米ドル安リードしたユーロ/米ドルなどに調整の機運
先週金曜日、一気に104円割れ寸前まで急落した米ドル/円でしたが、その後一転して、一時106円まで急反発となりました。月末要因の米ドル買いの影響などが指摘されましたが、もう一つ、米ドル下落をリードした形となっていたユーロ/米ドルが急反落(米ドル高)となったことも影響しているのではないでしょうか。
6月末には1.12米ドル台だったユーロ/米ドルは、7月末には一時1.19米ドルまで一段高(米ドル一段安)となりました。こういったなか、CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジションは、確認できる限りで、これまでの最高の買い越しとなりました(図表3参照)。
経験的には、ユーロの「買われ過ぎ」懸念が強くなっています。
また、ユーロ/米ドルの週足チャートは、先週までに6週連続陽線となりました(図表4参照)。以上から、米ドル安をリードした形となっていたユーロ高・米ドル安の動きがそろそろ一段落し、反動が入る可能性が注目されます。仮に、対ユーロで米ドル反発となった場合、それに米ドル/円も連れる可能性に注意すべきです。
米ドル/円と「米国株」の関係に注目!
最後に、株との関係について述べてみたいと思います。米ドル/円は、先週こそ急落したものの、過去一年ほどは、日米金利差では説明できない高水準での推移となってきました(図表5参照)。これは、「金利差をほとんど無視した米国株投資」が一因だった可能性がありそうです。
米ドル/円と日米金利差のかい離が拡大したのは、昨年後半でした。金利差の割に下がらない米ドル/円を、その後しばらく説明できたのは、NYダウなど米国株でした(図表6参照)。いわゆるGAFAに代表される米グロース株人気に伴う米国株投資が、金利差からかい離した米ドル/円の上昇を支えたのです。
金利差からかい離した米ドル高は、対円だけの現象ではありませんでした。すでに述べたように、ユーロ/米ドルなどは最近にかけて大きくユーロ高・米ドル安が進み、金利差とのかい離が是正されてきました。「金利差とは無関係のGAFA人気」を受けた、米ドル買いの変化が一因だといえます。
ただ、そのなかで、ほとんど米ドル/円だけが金利差からかい離した米ドル高水準が続きました。先週にかけての米ドル/円急落は、「金利差からかい離したほとんど最後の米ドル高」是正の始まりといった見方もできます。それが米国株にどう影響するかは、8月の為替の行方を考える上でも注目されるのではないでしょうか。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
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