先週は全体的に、米ドル安が目立つ展開となり、対円では一時105.6円(3月の「コロナ・ショック」以来の安値)まで下落しました。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「今週、円以外の通貨に対する米ドルの行方は『株価』が鍵」であると述べています。一体なぜなのでしょうか。本連載では、吉田恒氏が「今週のFX投資戦略」について解説します。

「7/27~8/2のFX投資戦略」のポイント 

【ポイント】

・先週は全体的に米ドル安。ただ対円での米ドル安は米金利低下、対円以外での米ドル安は週半ばにかけての米国株高といった具合に影響した対象が違った可能性。

 

・米ドル/円は長期三角保ち合い「下放れ」攻防に注目。

 

今週の米ドル/円は「下放れ」攻防に注目
今週の米ドル/円は「下放れ」攻防に注目

 

・円以外の通貨に対する米ドルの行方は株価が鍵。株安なら米ドル買い戻しの可能性も。

対円と対円以外で米ドル安の理由は違う!?

先週は全体的に、米ドル安が目立つ展開となりました。米ドルは、対円では一時105.6円、3月の「コロナ・ショック」以来の安値まで下落しました。また対ユーロでは、年初来の安値(ユーロ高値)を大きく更新し、1.165ドルを記録しています。ただ、このような米ドル安の理由は、対円と対ユーロなどでは違うかもしれません。

 

この間の米ドル/円は、「日米10年債利回り差」で説明が可能です。先週米ドル/円が下落したのは、図表1から読み取れるように、米10年債利回りが0.6%を割り込んで、日米金利差米ドル優位が縮小した影響が大きかったのだといえます。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表1]米ドル/円と日米金利差 (2020年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

一方、対ユーロでの米ドル下落(ユーロ/米ドル上昇)は、このところ株高との相関関係が目立っていました。先週半ばにかけてNYダウが上昇し、一時2万7千ドルを超えたのは、ユーロ高・米ドル安の面が強かったことが理由ではないでしょうか。

 

NYダウなど米国株は、週後半には続落となりましたが、それを尻目にユーロ高・米ドル安が続きました。ただ、豪ドル/米ドルなどは、米国株が反落に向かうと上値の重い展開となりました。以上から、円以外の通貨に対する米ドル安は、米国株の影響を受けやすいということができます。

長期三角保ち合い下放れ、106円巡る攻防に注目

先週は全体的に米ドル安が目立ったものの、円に対するそれと、円以外の通貨に対するそれとでは理由が違うのではないかということを、これまで確認してきました。それならば、今後の行方についても、円に対する米ドルと、円以外の通貨に対する米ドルは分けて考える必要があります。

 

まずは米ドル/円についてです。上述のように、先週の米ドル/円は一時106円を大きく割り込みました。米ドル/円は、2015年頃から長期三角保ち合いが続いており、その下限は106円程度と見られます(図表2参照)。

 

よって、106円を完全に割り込み、長期三角保ち合いの「下放れ」となるかが注目ポイントといえるでしょう。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表2]米ドル/円の月足チャート(2015年~) 出所:マネックストレーダーFX

米国株下落の場合、対ユーロの動きに要注目

次に、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルについてです。上述のように、これらの通貨は米国株との相関関係が強い状況が続いてきました。大まかにいうと、「株高・米ドル安」、「株安・米ドル高」です。私は、これには「ドル・キャリー」、つまり、安く調達した米ドルを売って、株などに投資する取引の影響が大きいのではないかと考えてきました。

 

そのような見方からすると、今後のユーロ/米ドルなどの行方は、米国株次第といえるでしょう。

 

また、米国株は、NYダウなど90日MA(移動平均線)からのかい離率でみると、「上がり過ぎ」懸念が強まっていました。そして、そんなNYダウ以上にナスダック指数の上昇が目立ち、それをいわゆる「グロース株」がリードする構図となっています。つまり、「グロース株」、ナスダック指数の下落がどれだけ広がるかが注目ポイントだといえます。

 

米国株が下落するのであれば、一旦米ドルは買い戻され、ユーロや豪ドルなどは下落する可能性があります。とくにユーロは、CFTC統計のポジションでも「買われ過ぎ」懸念が強くなっていたので株安となり、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルといった「ドルストレート」が下落するのであれば、ユーロ/米ドルの動きが焦点になるのではないでしょうか(図表3参照

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表3]CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2017年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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