利用ゼロでも解約困難、年会費を支払い続ける地獄
元気なうちは、リゾートクラブ会員権は使い勝手があります。しかし、本人が認知症になってしまった場合、脱会したくても預託金の返還がままならず、さらに相続でも評価対象となる現実があります。
リゾートクラブ会員権のシステムは、個人で別荘やリゾート施設を購入するのとは違い、入会金や預託金を払って会員になれば、リーズナブルな料金で国内外のリゾート施設で過ごせることになります。このため、こうした施設を利用して優雅に過ごそうと、会員権を買い求めようとする一定の社会的ニーズがあります。
しかし実際には利用したい時期には利用者が多く、希望日に利用できないとか、部屋の使用料が値上がりした、あるいは預託金の据置期間があって解約できないなどの状況も発生しています。
問題は、この種の会員権を購入した人が認知症になった場合です。施設利用がないのに、年会費が引き落とされることになります。『【マンガを見る】認知症と会員権:退会も解約も困難…引き落とされ続ける年会費』では、預託金の据置期間があと7年残っているので、預託金の返金も申し込めないことに頭を抱えています。また名義変更にも費用がかかり、打つ手が思いつかず、預託金据置期間を待って退会する人もいます。
塩漬け状態でも「相続税の評価額は高い」厄介な事実
リゾート会員権を処分する方法として、仲介会社を使って売却をする場合もあります。ただし売買ができたとしても、預託金額よりも、安価になってしまうことがあります。
さらに売却しようとして、売り手が重度の認知症だと発覚した場合は、本人の意思確認ができないことから、後見人を立てて譲渡手続きを行うことになります。そうなると、さらに時間と費用がかかります。
では本人が生きている間にリゾート会員権を処分できず、相続対象になった場合はどうなるのでしょうか。塩漬けになっているリゾート会員権も、相続ではそれなりに評価されます。国税庁の「質疑応答事例」によると、「取引事例のあるゴルフ会員権の評価方法に準じて、課税時期における通常の取引の70パーセント相当額により評価します」とあります。リゾート会員権には数百万円の時価で取引されるものも、けっこうあります。このため、相続資産そのものを増やすことにつながります。
家族で相談して、リゾート会員権を利用しないと決めたら、本人が生きている間に売却してしまうのも選択肢に入れておいてほしいところです。
「返金まで数年待って…」ゴルフ会員権ならではの事態
リゾート会員権と同じように、ゴルフクラブの会員権でも悩ましい状況があります。預託金の据置期間が過ぎたので返還を求めると、ゴルフ場によっては「据置期間を延長したのであと数年待ってほしい」と申し出を受けることも。もちろん会員である以上、年会費の支払義務が発生するので払わなければなりません。
ゴルフ人口の減少を背景に、現在多くのゴルフ場は会員から集めた預託金などをゴルフ場運営や整備資金に使わざるをえない状況です。このため、会員から返金を求められても、すぐに預託金の返金に応じられないのが実状のようです。
【監修】奥田 周年
OAG税理士法人 取締役
税理士、行政書士
【協力】IFA法人 GAIA 成年後見制度研究チーム
【編集】ビジネス教育出版社 『暮らしとおかね』編集部