国民の約10人に1人が分譲マンションで生活している現在、居住者たちは大きな危機に瀕している。老朽化と大規模修繕、管理組合との付き合い、住民の転居と高齢化……。住まいが「ゴーストマンション」に至る危険性を知っているだろうか? 一級建築士である小林道雄氏は書籍『分譲マンション危機』(幻冬舎MC)にて、繰り返し繰り返し、分譲マンション居住者への危機感を示している。

「行政がなんとかしてくれる」マンション居住者は甘い

◆税金などの助成金を受けて解体できるか

 

税金などで解体できるのではないか(報道によると、行政の解体代執行や略式代執行では、戸建廃屋は約300万円ほど使って解体しているが)という、淡い期待を思いつかれるかもしれませんが、具体的には期待薄でしょう。

 

公費で解体して、更地を売って解体費に充当すれば良い、との考えもあるでしょうが、これでも一般市民の理解は得られないと思われます。その理由は、戸建住宅と違って分譲マンションの解体費用は、金額が高額になることです。あくまで、分譲マンションの所有者の問題であり、税金を使うことには、国民から不満が出ることになります。また区分所有者等の同意は得られても、抵当権者などからの同意は無理でしょう。行政も手出しはできないということです。

 

また、行政代執行のように行政の力で支援や手助けを受けようとする気持ちが、当該分譲マンションをゴーストマンション化させてしまった原因でもあると思います。特に、木造の戸建住宅でも、自ら倒壊するほどに腐朽するまでの年月は長期とは思いますが、それに比べ、マンションの建物は非常に長いのです。

 

このように、自ら倒壊するまでの期間を論じても意味がないことなので止めますが、柱や梁といった主要構造体は、自らは倒壊しないと言っても過言ではないのです。イタリアローマのコロッセオ競技場は、築2000年といわれていますが、今でも倒壊していません。中も歩くことはできます。でも建物としての機能はありません。まさに遺跡です。このことと同様に論じるのはナンセンスなことです。

 

但し、大地震などで大破したマンションの解体を、行政の支援で解体し、その費用は返却しなくてよい、との情報を聞くことはあります。震災地の行政の判断によることと思いますが、この場合であっても、解体した更地を売却した費用で行政に返却する方がよいと考えています。

 

◆個人財産まで行政の介入はない

 

分譲マンションは、区分所有者の皆様方による個人財産の集合体です。但し、個人財産といっても、自由に売買などができるのは各住戸の専有面積部分のみとなり、共用部分は文字通り共有財産となり、単独では自由に売買できません。

 

建物が存在する間は、共用の階段や廊下、エレベーターあるいはバルコニー部分は共用部分となり、皆様方の共有財産となります。従って、分譲マンションの建物や敷地も、戸建住宅と同じように、敷地内は敷地も含め民間の私的財産となります。

 

民間の財産には行政の介入はないというのが一般的な考えです。公衆道路に窪みなどの傷みができれば、行政により税金負担で直してもらえます。しかし、各個人の敷地内の事柄については、各自で対応かつ解決するしかないのです。

 

分譲マンションも例外ではありません。たとえ、地震などの大災害が起こったとしても、行政が建替えや修繕工事をしてくれることはありません。したがって、このような災難が不幸にして降りかかっても、マンション全体として落ち着いて対応できるように、予め、対応計画書並びに金銭的な準備が必要と考えているのです。

 

 

※本記事は連載『分譲マンション危機』を再構成したものです。

 

小林 道雄

一級建築士 設備設計一級建築士


 

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