
国民の約10人に1人が分譲マンションで生活している現在、居住者たちは大きな危機に瀕している。老朽化と大規模修繕、管理組合との付き合い、住民の転居と高齢化……。住まいが「ゴーストマンション」に至る危険性を知っているだろうか? 一級建築士である小林道雄氏は書籍『分譲マンション危機』(幻冬舎MC)にて、繰り返し繰り返し、分譲マンション居住者への危機感を示している。
分譲マンション住人は不安と絶望の地獄を見る
事前から準備をしておく以外に方策はありません、ということは繰り返し述べましたが、どのような方策が良い、と仮にお知らせしたとしても、なにも行動は起こされないのです。大津波防御の為の防潮堤の建設のようなものです。
いつ来るか分からない津波の為に、膨大な費用を費やす防潮堤の建設がなかなか進まないのと似ています。津波は一生涯で一度くるかこないか分からないので、費用対効果も不明瞭のままで、検討はされているでしょうが、建設まで時間がかかるものと思われます。
しかし、分譲マンションについては、自明の理ですが、時間とともに建物は劣化していき、賃貸住戸化などの居住形態や居住者の変化があります。その結果、分譲マンションはゴーストマンション化していき、終盤の漂流廃墟マンション状態は必ずやってくるのです。
事前に、分譲マンションの終焉期の勉強や検討をされて、予防の為の行動を起こされ、終焉期を新たな金銭的負担も無く、安心して暮らせ、耐用年限まで納得して迎えられるか。無関心で放置していて、今後、必ずやってくるゴーストマンションの状態に陥り、この状態が、あとなん年続くか不明の中、その間ズーッと不安と絶望の地獄を見、かつ世間の迷惑物になるのか。そんな分かれ道になっても、行動は起こされません。
唯一いえることは、こちらから指南や指導をするのではなく『自分達のマンションの将来のイメージを共有してほしい』ということです。

人の人生でも同じと思われますが、高齢になってくると、自分の人生を顧みて自分史を作る人や、今後のことに向けては、今、住んでいる住宅の行く末のこと、自分の入るお墓のことなどを考える瞬間があるのと同じように、住んでいるマンションの将来についても思う瞬間はあると思うのです。ここがターニングポイントです。
勉強会などで、イメージの共有に向かったならば、あとは簡単です。その心配事や予防策などを具体的に実行していけば良いだけです。