不動産投資において、必ずでてくる「利回り」というワード。この数値を根拠に物件の良し悪しを見極めるケースも多いのですが、一方で、数値のマジックに誤った判断をしてしまうこともあります。みていきましょう。

「自己資金が回収したら売ればいい」の罠

 

しかしこの数字は現実的だといえるのでしょうか。

 

営業マンのなかには、「自己資金が回収できたら、物件は売れば良いですよ」とセールスするケースも多いといいます。しかし、実際には金融機関からの融資を受けた借入金7,000万円のうち、残債が約5,800万円あるため、仲介手数料などを含めると、最低でも6,000万円以上で売却できなければ赤字となります。

 

さらには、家賃下落の可能性も考えなければいけません。国土交通省の不動産市場データベースから家賃の下落率を算出すると、築10年で1割、築20年で2割というのが業界の平均。しかしこれはあくまでも平均値であり、入居付けに苦労するエリアであれば、新築時の入居者が退去後、次の入居者を決める際に、家賃を2~3割ほど値下げしなければいけなかった……という事例も珍しくはありません。

 

仮に6年後の時点で家賃が2割下落したとすると、年間家賃収入は460.8万円になります。この状態で中古市場に表面利回り8%で出したとすれば、5,760万円での売却となり、借入残債と仲介手数料193万円を差し引くと、233万円の赤字となります。それでは売却は無理なので、所有を続けた場合、年間家賃収入が年間経費を下回り、やはり赤字となります。

 

つまり、「高い利回り」を謳い文句にアパートが売り出されていた場合、上記のどの利回りの数字を出しているのかを確認する必要があるのです。将来的な利回りは、売り手がどうにでも設定できる数字ですから、絵に描いた餅にすぎません。投資利回りとして出した数字を掲げ、「利回り10%でも低い」などと煽る売り文句には十分注意しなければいけません。

 

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