「無間地獄でした」株価右肩上がりだったが…
正式名称は転換社債型新株予約権付社債、英名「Convertible Bond」の頭文字を取ってCBと呼ばれていました。これは端的に「株に転換できる社債」のことで、社債であることに変わりはないのですが、株に転換できる特徴が付加されています。
株価が上昇すれば、この社債を株に転換することで利益を得ることができますし、社債として持っておいても元本が返ってくるうえに利息ももらえます。投資家にとってほぼノーリスク、そしてミドルリターンの、非常にうま味のある金融商品でした。
当時はCBブームといえるくらい、大手企業がこぞって転換社債を発行し、仲立ちする証券会社が次から次へと販売していました。
時代が味方していたこともあり、どこも株価は上昇の一途。ほぼ確実に利益を得られるCBですから、投資家は我先にと手を挙げます。発行する企業としては手っ取り早く資金が集められるので、やらない手はないでしょう。手数料を稼げる証券会社としても、これほど利益貢献してくれる商品はほかになかったように思います。新発CBをひっさげて営業に回れば、新規開拓もさほどの労なく行えたものです。
しかしブームはいずれ終わりを迎えます。
企業が続々と発行に乗り出していましたが、株価が上昇しないケースが増え、転換社債に当初ほどのうま味はなくなっていき、買うのをためらう投資家も増えてきました。新発CBを持って営業をかけてもなかなか首を縦に振ってはもらえなくなってしまったのです。需給のバランスが崩れて以降のCBノルマ達成には、大いに苦労した思い出があります。
入社3年目に本気で会社を辞めたいと思ったことがあるのですが、この時は新発CBノルマが大量に課されたときでした。白板に発行企業とその株数を書いて、ノルマをこなすごとに消していくのですが、一つ遂行してもまた次のCBが追加されていくのです。そしてそのCBが転換社債市場に上場するときは必ずマイナスの値段でスタートするような状態でしたので、毎日無間地獄にいるような苦痛を味わいました。
次回は明日(7/17)配信。
※本記事は書籍『株オタクの現役IFAが指南!本当に儲かる「株」講座』を抜粋したものです。
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原田 茂行
IFA/自由が丘財産コンサルタンツ合同事務所代表/一般社団法人シニアウェルスライフ協会代表理事