米国に漂う「倒産連鎖」の暗雲

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1818年にニューヨークで創業した米老舗紳士服の「ブルックス・ブラザーズ」は7月8日、日本の民事再生法に相当するチャプター11(米連邦破産法第11条)の適用を裁判所に申請し経営破綻した。V字回復の様相を呈する米国株式市場とは裏腹に、米国では大手企業の倒産が相次いでいる。

コロナ禍で押し寄せた「企業淘汰」の波

米国ではコロナショックをきっかけに企業の倒産が相次いでいる。衣料品の「J.クルー」、レンタカーの「ハーツ」、百貨店の「ニーマン・マーカス」、シェールの「チェサピーク・エナジー」などは、今年3月以降に経営破たんした代表的企業だ。無論、これらの企業はコロナショック前から経営に行き詰っていた。小売はアマゾンの台頭、シェールは再生可能エネルギーへのシフトなどによる逆風が業績を圧迫していた。しかし、コロナ禍の影響はこれらの業種にとどまらない。

 

米国の倒産件数(負債5千万ドル以上)は7月8日時点で年初来134件、すでに2019年通年の139件に迫る勢いだ(図表1)。倒産件数を業種別で見ると、小売が含まれる一般消費財・サービスが全体の40%、エネルギーが17%であり、2業種を合わせると過半を占める(図表2)。この2業種が多大なる影響を受けていることは自明の理だが、逆に言えばそれ以外の業種が全体の43%を占めていることを意味し、決して「企業淘汰」の波が特定業種にのみ押し寄せているわけではないことが分かる。

 

年次、Chapter7とChapter11(負債5千万ドル以上)の申請件数 2020年は年初来、期間:1995年1月1日~2020年7月8日 ※Chapter7(米連邦破産法第7条)、Chapter11(米連邦破産法第11条) 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国倒産件数 年次、Chapter7とChapter11(負債5千万ドル以上)の申請件数
2020年は年初来、期間:1995年1月1日~2020年7月8日
※Chapter7(米連邦破産法第7条)、Chapter11(米連邦破産法第11条)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

期間:2020年1月1日~2020年7月8日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国倒産件数業種別割合(年初来) 期間:2020年1月1日~2020年7月8日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

「二極化」による功罪

一方で、コロナ禍はGAFAといった「勝ち組」を鮮明にした。2020年6月末時点で時価総額上位5社のアップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、フェイスブックのうち、株価がコロナ前の高値を更新していないのはアルファベットのみで、それ以外は軒並み高値を更新した。

 

さらに、これら5社の一極集中も際立っており、米国市場全体の時価総額に占める割合は2020年6月末時点で全体の18.6%まで上昇(図表3)、米国株式市場がV字回復の様相を呈しているのも、これら大型成長株が株価上昇をけん引しているからに他ならない。

 

しかし、裏を返せばそれ以外の銘柄は劣後しているということになる(上位5社以外の時価総額が同様に上昇していれば、上位5社の時価総額割合は一定になる)。株式市場だけを見ていては実体経済の悪化は見えてこない。景気回復によって米国企業全体の業績が戻らなければ、「倒産連鎖」のリスクはこれまで以上に高まる可能性がある。

 

月次、期間:2005年1月末~2020年6月末(Facebookは2012年5月末~) ※米国市場時価総額はADR、ETF除く ※主要5社はApple、Microsoft、Amazon、Alphabet、Facebook 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]米国市場時価総額と主要5社時価総額割合(全体比) 月次、期間:2005年1月末~2020年6月末(Facebookは2012年5月末~)
※米国市場時価総額はADR、ETF除く
※主要5社はApple、Microsoft、Amazon、Alphabet、Facebook
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国に漂う「倒産連鎖」の暗雲』を参照)。

 

(2020年7月10日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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