新興国株式市場 米国と異なる金融緩和と株価の関係

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新興国では米国と同様、コロナショックをきっかけに金融緩和を加速させる動きが強まっている。一部の新興国では伝統的金融政策である政策金利の引き下げに加え、非伝統的金融政策である量的緩和の導入に踏み切る中銀が相次いでおり、世界的な金融緩和競争の様相を呈してきた。しかし、米国株式市場とは対照的に、新興国株式市場における反応は冷ややかだ。

新興国でも広がる量的緩和ドミノ

新興国における金融政策は、これまで政策金利を調節する伝統的金融政策が主体だった。しかし、今回のコロナショックをきっかけに、主に先進国で採用されてきた非伝統的金融政策である量的緩和の導入が相次いだ。チリ、ポーランド、南アフリカ、トルコなど、量的緩和を採用した新興国の中銀はすでに10行を超え、政策金利の引き下げとともに未曾有の量的緩和策がコロナショック後に実行された(図表1)。

 

しかし、大規模な金融緩和策によって株価が大きく反発した米国株式市場とは異なり、新興国株式市場における株価の戻りは総じて鈍い(図表2)。その要因として挙げられるのが、①量的緩和の性質と、②株式市場における業種構成の違いだ。

新興国株式市場が米国株式市場に劣後した要因は?

先進国における量的緩和は、すでにゼロ又はマイナス金利となった政策金利の代替手段となる「景気刺激策」としての側面や、社債やコマーシャル・ペーパー市場への流動性供給といった「信用供与」としての側面が強い。しかし、新興国における量的緩和は、あくまで自国の「債券市場の安定」が目的だ。このため、量的緩和による波及効果も限定的だったことが考えられる。

 

もうひとつの要因は業種構成の違いだ。新興国株式市場の年初来株価騰落率(2019年12月末~2020年6月末)で上位を占める中国、台湾、韓国といった国は、インターネットや半導体などテクノロジー関連セクターの割合が高く、「アフター・コロナ」による需要構造の変化や金利低下(ファイナンスにおける割引率低下)による成長株の株価バリュエーション押し上げといった恩恵を享受することができた。その一方で、コロンビアやブラジル、ロシアといった国は、素材やエネルギー、金融セクターの構成比率が相対的に高いため、株価の戻りが鈍かったと考えられる。

 

今後さらに注目すべきは新興国通貨の動向だ。特に財政赤字国は経済ショックによって資金流出を起こしかねず、対米ドルで現地通貨安になる傾向がある(図表3)。当面は新興国株式に対して慎重な投資スタンスが求められるだろう。

 

中銀総資産変化率は年初来(ポーランド、ブラジル、南ア、タイ、米国は5月末まで、フィリピン、韓国は3月末まで、それ以外の国は4月末まで)。利下げ幅は年初来(6月末まで)。紫は量的緩和導入国を示す 出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中銀総資産増減率(横軸)と利下げ幅(縦軸) 中銀総資産変化率は年初来(ポーランド、ブラジル、南ア、タイ、米国は5月末まで、フィリピン、韓国は3月末まで、それ以外の国は4月末まで)。利下げ幅は年初来(6月末まで)。紫は量的緩和導入国を示す
出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成

 

現地通貨建て、配当込み、期間:2019年12月末~2020年6月末 出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成
[図表2]年初来株価騰落率(MSCI国別株価指数) 現地通貨建て、配当込み、期間:2019年12月末~2020年6月末
出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成

 

通貨別騰落率:2019年12月末~2020年6月末 財政収支比率:2019年時点  出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成
[図表3]通貨別騰落率(対米ドル)と財政収支比率(対GDP) 通貨別騰落率:2019年12月末~2020年6月末
財政収支比率:2019年時点
出所:ブルームバーグよりピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新興国株式市場 米国と異なる金融緩和と株価の関係』を参照)。

 

(2020年7月3日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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