ビジネスで海外の人々と関わる際、自国の歴史の知識は必須だといえます。しかし、日本人が注意しなくてはならないのが「外国人に関心の高い日本史のテーマは、日本人が好むそれとは大きく異なる」という点です。本連載は、株式会社グローバルダイナミクス代表取締役社長の山中俊之氏の著書『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)から一部を抜粋し、著者の外交官時代の経験をもとに、外国人の興味を引くエピソードを解説します。
このような欧州におけるラテン語の存在に匹敵するのが、日中韓における漢文でした。そして日本は、この漢文文化圏において独自の文化を発展させていきます。
明治維新後も国語教育の一環として漢文は重視されてきました。天皇家でも漢文の素養は重視されており、大正天皇の時代までは、天皇が漢詩を作っていました(ドナルド=キーン著『明治天皇を語る』)。漢詩と和歌が並行していた時代は長いのです。和歌のみになったのは昭和天皇の時代からです。
新しい元号「令和」が、国書である『万葉集』から取られたことが、注目されています。私も国書から日本の元号を取ることに何ら異論はありません。
もっとも、先述したように、そもそも元号の存在自体が中国由来です。また、さらにいえば漢字は中国由来です。ただ、日本では中国とは違った独自の元号が使われてきました。他の東アジアのいくつかの国と違い、大陸と海を隔てた日本と中国との関係では対等性、独自性が強かったのです。元号についての議論は、改めて古代以来の東アジア漢文文化圏について思索を深める機会になったのではないでしょうか。
このように日中韓の歴史は、近代だけでなくて、古代以来の交易や文化交流の視点からも見ていくことが大事であると思います。
山中 俊之
株式会社グローバルダイナミクス 代表取締役社長
株式会社グローバルダイナミクス
代表取締役社長
神戸情報大学院大学教授。「世界と日本」の歴史や文化に関する企業研修やセミナーを多数実施。1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、90年外務省入省。エジプト、英国、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。また、首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、株式会社日本総合研究所入社。全国の自治体改革の案件に多数関与。09年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にてグローバルリーダーシップの研鑽を積む。10年、グローバルダイナミクスを設立。SDGsカードゲームファシリテーターとしてSDGsの普及にも務める。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士
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