先行CI前月差+1.6で3ヵ月ぶり上昇、一致CI前月差▲5.5と4ヵ月連続下降
5月分の機械的な基調判断は「悪化を示している」で据え置き
●5月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+1.6と3ヵ月ぶりの上昇になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数の6系列が前月差プラス寄与度に、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、中小企業売上げ見通しDIの3系列は前月差マイナス寄与度になった。
●5月分の一致CIは前月差▲5.5と4ヵ月連続下降になった。速報値からデータが利用可能な7系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の全系列が前月差マイナス寄与度になった。
●なお、商業販売額指数・小売業の前年同月比は5月分▲12.3%と4月分の▲13.9%から+1.6ポイント前月差プラスであるが、「共通循環変動」部分が大幅に下降したため「系列固有変動」部分が大幅に上乗せされたことになり、外れ値処理の対象である「系列固有変動」部分が大幅に刈り込まれ、前月差寄与度がマイナスになっている。
●一致CIの3ヵ月後方移動平均は前月差▲6.36ポイント下降し、8ヵ月連続の下降になった。7ヵ月後方移動平均は前月差▲2.99ポイント下降し、19ヵ月連続の下降になった。
●最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、19年5月分・6月分・7月分と「下げ止まり」の判断だったが、8月分で「悪化」に下方修正された。9月分・10月分・11月分・12月分・20年1月分・2月分・3月分・4月分に続き、5月分も「悪化」継続になった。10ヵ月連続の「悪化」は、08年6月からの11ヵ月連続以来の長さ(09年4月は「景気動向指数(CI一致指数)は、悪化を示している。ただし、CI一致指数の前月差が11ヵ月振りにプラスに転じるなど、下げ止まりの動きも見られる」とただし書きが付いていた)である。
●5月分の先行DIは11.1%と5ヵ月連続で景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、マネーストック1系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列がマイナス符号になった。
●5月分の一致DIは0.0%と3ヵ月連続で景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な7系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の全系列がマイナス符号になった。
●7月27日発表予定の5月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は7月9日である。また在庫率関連データが7月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。
●5月分景気動向指数・改訂値で、一致CIには所定外労働時間指数が新たに加わる。本日発表された5月分速報値は68.8で4月分の78.3から大幅に低下した。5月分確報値の発表日は7月22日なので、27日発表の景気動向指数・改訂値では確報値が使われようが、前月差マイナスに寄与し、一致CIの下方修正要因になろう。生産指数関連データが7月14日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データが7月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。
●6月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。4系列とも前月差プラスになることが判明している。
●また、6月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列で、東証株価指数1系列がプラス符号に、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になることが判明している。6月分速報値段階の先行DIは11.1%以上66.7%以下になることが確定している。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年5月分景気動向指数(速報値)』を参照)。
(2020年7月7日)
宅森 昭吉
株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト