米雇用統計、市場予想を上回るも、冷めた反応の理由

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ヘッドライン5月11日号『米国失業率、今後の動向の注目点』で、現局面での失業者は、通常は2割程度に過ぎない一時的解雇の割合が、現在はほぼ8割と歴史的高水準であることと、雇用市場の動向を占う上で一時的な解雇者の復帰に注目していることを述べました。非農業部門雇用者数の前月比を見る限り、職場復帰のペースは想定を上回りますが、課題も残されているようです。

米国雇用統計:先月に続き、6月も市場予想を上回る回復を示す

米労働省が2020年7月2日に発表した6月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比480.0万人と、市場予想(323.0万人)、前月(269.9万人)を上回りました。主な業種の雇用者の増減を見ると娯楽、小売、教育・医療など過去に雇用を減らした業種が回復しました(図表1参照)。

 

失業率は11.1%と、市場予想(12.5%)、前月(13.3%)を下回りました。一方、時間当たり賃金は前月比マイナス1.2%と、市場予想(マイナス0.8%)、前月(マイナス1.0%)を下回りました。低賃金のパート従業員などが多く労働市場に戻ってきていることが背景にあると見られます。

どこに注目すべきか:一時的解雇、就業者数、感染再拡大

ヘッドライン5月11日号『米国失業率、今後の動向の注目点』で、現局面での失業者は、通常は2割程度に過ぎない一時的解雇の割合が、現在はほぼ8割と歴史的高水準であることと、雇用市場の動向を占う上で一時的な解雇者の復帰に注目していることを述べました。非農業部門雇用者数の前月比を見る限り、職場復帰のペースは想定を上回りますが、課題も残されているようです。

 

6月の米雇用統計に対する米株式市場の反応も、発表直後は市場予想を上回る雇用者の伸びなどを受け上昇しましたが、その後は冷めた(?)反応となりました。この背景として次の点がポイントと見ています。

 

雇用市場の回復そのものは織り込まれていたと見られることです。特に事業所調査(雇用者数)の6月12日、家計調査(失業率)の13日の前後までであれば、経済活動再開に伴い雇用の伸びも期待されるところです。回復ペースの速さは市場予想を超えていますが、単月のブレが大きい点に注意も必要です。

 

また、雇用市場の回復を見るうえでは、水準も意識する必要があります。例えば、職がある就業者数を2月末と比べると、5月~6月に雇用が回復したものの、約1657万人減少しています。雇用市場が持続的に回復基調を続けるかに注目することがより重要と思われます。

 

雇用市場の今後の回復を占う上で、早くも気がかりな点があります。雇用統計と同日に公表された6月27日の週までの新規失業保険申請件数が143万件と、市場予想の135万件ほどには減っていないことが示されたことです。関連性の確認は必要ですが、テキサスやフロリダなど主要な州での新型コロナウイルスの感染再拡大が影響した可能性も考えられます。

 

6月後半からこれらの州では急速に経済活動が縮小している模様です。レストランの予約状況を見ると、3月から4月にかけては経済封鎖で予約が無い(前年比マイナス100%)状況でしたが、経済を再開させた5月から6月半ばまでは順調にレストランの予約状況に回復が見られましたが(図表2参照)、足元、感染再拡大で急速に悪化しています。なお、感染再拡大懸念が雇用回復ペースをどこまで遅らせるかは今後のデータを待つ必要があります。いずれにせよ、月ごとのデータに加え、速報性の高いデータを補完的に利用して、柔軟に雇用統計を判断することが今後も求められると見ています。
 

月次、期間:2020年5月(左)~2020年6月(右)、前月比、図中数字は6月 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]非農業部門雇用者数の主なセクターの変化 月次、期間:2020年5月(左)~2020年6月(右)、前月比、図中数字は6月
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

日次、期間:2020年2月18日~2020年7月1日、前年比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国の主な州のレストランの予約状況の推移 日次、期間:2020年2月18日~2020年7月1日、前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米雇用統計、市場予想を上回るも、冷めた反応の理由』を参照)。

 

(2020年7月3日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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