驚愕の借金額…「息子に地獄を見せる前に」75歳、苦渋の決断

本記事は株式会社財産ドック著『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

市内に1000坪もの土地。固定資産税もバカにならず…

福岡県のX市にお住まいのFさんは、市内に1000坪の土地を持っています。この土地は先祖から代々受け継がれてきたもので、Fさんも父親から継承するとき「手放すことなく大切に守り続けてほしい」と託されました。当然、自分が死んだ後は2人の息子に引き継ぎ、大事に守ってほしいと願っています。

 

Fさんから相談を受けた当時、その土地は遊休地になっており、特に何の利用もされていませんでした。X市は県内でも人口数の比較的多い市で、福岡市や北九州市ほどではないにしても、それなりに土地の単価が高い地域です。1000坪にもなると毎年の固定資産税もバカになりません。相続するにしても相続税が心配です。そのため、Fさんはこの土地に賃貸物件でも建てようと考えたのです。

 

地元のハウスメーカーに相談すると、「これだけの土地だから、建てる物件も見合った規模でないと」と言われ、大きなマンションの建築を提案されました。建築費は3億~4億円ほどかかると言われました。そんな大金は手元にありませんから、銀行から融資を受けることになりますが、果たしてそんなに多額の借金をしてしまっていいものかどうか不安になりました。

 

「自分は既に75歳で、いつ相続が起きてもおかしくない。今、借金をしてしまったら、ほとんど返済もできないまま丸ごと息子たちに背負わせることになるだろう。それはできない」と言うと、ハウスメーカーはちゃっかり銀行マンを連れてきて、返済プランなどを提示し、「仮に息子さんたちに負債がいっても、マンションからの賃料が入るので大丈夫。ハウスメーカーの家賃保証がある返済プランに無理はない。むしろ借金があるくらいの方が、相続税がかからなくて得だ」というような話をされました。

 

ただ、Fさんの地主仲間で同じように節税対策で賃貸物件を建てて、成功している人はほとんどいません。X市は実は、これから人口減少が進み、将来的に自治体が成り立たなくなって消滅してしまう、いわゆる「消滅可能性都市」でもあるのです。

 

今は人口が多くても近い将来に激減するのなら、ハウスメーカーがいくら家賃保証をするといっても、現実問題として満足する入居状態を維持するのは難しいはずです。Fさんはハウスメーカーの作ってきたシミュレーションが、理想的すぎる気がして疑わしくなりました。

 

それに、Fさんにはもう一つ気がかりなことがありました。2人の息子のうち、長男は商売の資質に長けているのですが、次男はどうも商売に向かないようなのです。賃貸経営をさせたところで、次男の手には余ってしまうのではないかと思いました。

 

3億円もの借金を今背負うのか
3億円もの借金を今背負うのか

過疎化が見込まれる地域での賃貸運営。その危険性は…

問題点1 人口減少

 

賃貸経営では、物件周辺の賃貸マーケットの見極めが重要です。せっかく賃貸物件を建てても借り手がつかなければ家賃は入ってこず、ローン返済もできません。特にX市のように人口減少が心配されているような地域では、空室リスクが非常に高くなってしまいます。

 

国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、日本の人口は既に減少過程に入っています。人口推計の出発点である2010年には1億2806万人だった日本の総人口は、2030年には1億1662万人、2048年には1億人を割り込んで9913万人に減る見込みです。さらに2060年には8674万人にまで減少すると言われています。

 

これをもとに民間研究機関「日本創成会議」が各自治体の今後を予測してみると、少子化と人口減少によって、2040年までに全国約1800市町村のうち約半数の896市町村が消滅する恐れがあることがわかりました。これが先ほど述べた「消滅可能性都市」です。

 

消滅可能性都市として存続が危ぶまれている自治体の中には、東京都の豊島区や大阪市の中央区などの大都市も挙げられています。特に秋田県では大潟村を除く全自治体に消滅の危機があるとのこと。福岡県でも福岡市はそれほど人口減少はないようですが、X市などはまさしく消滅可能性都市に該当します。

 

急激な過疎化が見込まれているエリアで、これから賃貸不動産を建てようとすることがいかに危険なことかは、少し考えてみれば誰もが気づくことでしょう。人口減少を加味していない賃貸アパート・マンションの入居率を予想したところで、それは机上の空論です。Fさんがハウスメーカーの物件運用シミュレーションを「理想的すぎる」と感じたのも、至極当然のことなのです。

 

私はFさんに「ハウスメーカーの言うように賃貸物件を建てても、きっと経営がうまくいきません」と率直に申し上げました。「これから賃貸物件を建てようとする場合は、30年後に本当に目標とする入居率がカバーできるかどうかを考えなくてはいけません。明らかに人口が減っていくことがわかっているのに、大きなマンションに投資するということは、沈むことがわかっている舟に乗っかるようなものです。ぜひ冷静な判断をしてください」と言いました。Fさんは「やはりそうだったか」という表情で、私の説明にうなずいていました。

「ローンが返せない」借金地獄に陥る地主たち…

問題点2 投資の1カ所集中

 

Fさんのケースでもう一つ重要なポイントは、マンションを建てるために3億円も4億円もの投資をしてしまうことの危険性です。ハウスメーカーはしばしば地主に大きなマンションを建てさせたがりますが、それで借金を背負って四苦八苦しているオーナーがいっぱいいます。

 

投資の原理に基づけば、リスクを1カ所に集めないで、分散させることが大切です。株や投資信託でもいろいろな種類を購入するのが基本中の基本ですが、不動産でもその考えを応用した方がいいでしょう。つまり、大きなマンションをドカンと一棟建てるのではなく、小さな物件を複数建てるということです。1件ずつから上がる収益が小さいため全体の収入も小さくはなるかもしれませんが、運用比率や安全比率はその方が高まります。

 

これは私の実感ですが、この手の投資の話を地主さんにすると、たいていピンと来ない顔をされます。

 

本来、賃貸建物を建て不動産投資をするということは、ご先祖様から受け継いだ土地の上に建物を建てるわけですから、土地の価値も投資していることになります。1000坪の土地があって坪単価が10万円とするなら、1億円の価値を投資して、それがいくらになって返ってくるかを見なければなりません。1億円で国債を買えば、コンマ何%か増えて返ってきます。増えて返ってくる分が、つまり利回りですが、投資した土地の価値に対しての利回りを考えなくてはいけないということです。

 

賃貸経営をしている地主さんの大半は、「おたくの土地の利回りはいかがですか?」と尋ねても「え? 利回り?」という反応で、まず答えが返ってきません。そういう感覚でいると、かなり低い利回りでしか物件を運用できていなくても、気づかずに持ち続けてしまいます。すると、収益が上がらなくて、ローンが返せない……ということになりがちです。

 

こういったことは、通常ハウスメーカーは説明してくれません。説明してくれないから知らなくてもいいということではなくて、自分から勉強し情報を求めていくくらいでないと、これからの不動産経営は難しくなってくるでしょう。

賃貸マンションを建てる案は却下!次なる選択肢は…

解決策1 人口を調べて、対策を立てる

 

不動産投資をするときは、その土地の特性に合った活用法を考えていかなくてはなりません。そのためには当該土地や周辺エリアについて綿密な調査を行う必要があります。

 

まずは、当該土地の半径500mの中にどういう対象物件があるかということを詳しく調べ上げます。そして、その土地に対する最適な物件を必ず予想します。地域の特性や半径500mの状況などを調べている不動産会社は全国でもほとんどありませんが、これをやっておかないと地域にそぐわないトンチンカンな物件を建ててしまうことにもなりかねません。

 

賃貸不動産では入居率がすべてだと言いましたが、地域の特性を鑑みずに建てたがために入居率が目標値に達していないケースは非常に多く見られます。特に人口減少を加味することが重要です。

 

Fさんは、今の土地に賃貸マンションを建てる案は却下しました。ただ、土地活用をしたいという意向は変わりませんでした。そこで、私たちはいくつかの提案をしました。その一つが「資産の組み替え」です。

 

今の土地へのこだわりを捨てて、別の土地や物件に組み替えていくという案です。Fさんは、先祖の土地を手放すと聞いて案の定、難色を示しました。

 

しかし、今の土地では活用するにも限界があり、よほど考えて建てないと採算が合わなくなってしまいます。そもそも消滅するかもしれない街で、新たに事業を起こすこと自体が非常に危険です。事業のために借金をしてもそれが返せなければ、結局は土地を取られてしまいます。そうなったら、先祖の土地を守ることはできません。

 

ここで大事なのは、「資産を守る目的」を見失わないことです。Fさんにとって資産を守る目的が「土地」を守ることなのか、「資産としての価値」を守ることなのか。これを混同してしまうと、方向性を誤ってしまいます。

 

もしFさんが「土地」を守りたいのであれば、小さなアパート1軒でも建てておけば、そこは貸家建付地になるので、相続の際に評価減ができます。何も大きな借金までしてマンションを建てる必要はありません。ただ、Fさんにはこの土地以外に目立った資産がありませんから、相続が起きたら相続税納税のために土地の一部を手放すことにはなってしまいます。

 

Fさんが「資産としての価値」を守りたいのだとしたら、土地という形にとらわれないで、組み替えていく道がベストです。利益を生まない土地を、別のもっと利益を生む土地なり物件なりに買い換えるのです。例えば、都心の高層マンションなどを購入し、賃貸に出せば、そこからの家賃収入でまた新たな資産が増えていきます。そうすれば、単に〝先祖代々の資産〟を守るだけでなく、さらに価値を高め、増やしていくことができるでしょう。

 

ここまでのことを説明すると、Fさんは当初渋っていた「資産の組み替え」に対して興味を持つようになりました。

 

地主さんは自分の土地への愛着が強いために、土地を売ってしまうことを嫌がる傾向にありますが、それは不動産や資産運用の専門家がきちんとアドバイスをしきれていない部分も大きいのではないかと思います。不動産の組み替えを勧める理由やそのメリット・デメリットを明示すれば、Fさんのように「むしろ組み替えがいい」と選択していく地主さんも多いものです。

「資産の組み換え」75歳老爺の最終選択は…

解決策2 分散投資と賃貸戸建ての活用

 

Fさんには不動産の組み替え案のほかに、現在の保有地の一部に相続対策の効果も考えて賃貸戸建ての建築をお勧めしました。

 

賃貸アパートやマンションなどより低コストで建築できる点が第1の魅力です。全国的にも賃貸戸建てはまだ供給数が少なく潜在需要が非常に高いため、すぐに借り手が付きやすいことや、入居期間が長いので安定収入が見込めることが第2の魅力です。そして、1棟1区画ごとに分割できるので、売却や相続がしやすい財産であることが第3の魅力です。

 

賃貸用に建てられた戸建てなので、誰かが居住用に購入して要らなくなって賃貸に出す物件とは違います。居住用に建てられた家というのは、洋服でいえばオーダーメイドの服のようなもので、そこに他人が住むとなると、どうしてもしっくりこないことが多くなります。

 

その点、賃貸用に建てられた戸建ては万人受けするようにプラン設計されているので、誰が住んでも違和感が少なくなります。必要最低限の設備にすることでコストを抑え、多くの人にとって使い勝手が良く、外観も含めてとてもおしゃれにプランニングされているのです。

 

Fさんは結局、長男と次男の分として、保有地の中では比較的資産の目減りの少ないと予想される母屋に近い約300坪の土地に5棟ずつ計10棟の賃貸戸建てを建築し、残りの土地は資産の組み替えの対象地としました。安定的な経営が見込める賃貸戸建てなら、不動産投資には向かない次男でも安全に運用していけるはずです。仮に嫌なら、すぐに売却することもできるので問題はないでしょう。

貸地・借地・有効利用等の不動産に絡む相続対策に強みをもつ専門家集団。北海道から九州まで全国52 拠点の相談センターを展開する。税理士・弁護士・司法書士・測量士などの専門家集団によるチームコンサルティングで、不動産が絡む問題をワンストップで解決。税金対策にとどまらない不動産の特性を考慮した対策で、さまざまな不動産にかかわる問題を解決に導く。人間ドックと同じように財産も年に一度は健康診断が必要とのコンセプトから、地域の人たちの財産を守るためのアドバイスを行っている。(写真は代表の加藤豊氏)

財産ドック公式サイト https://www.zaisandoc.jp

著者紹介

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