2020年5月分鉱工業生産指数・速報値について

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

新型コロナウイルス感染拡大で鉱工業生産・前月比▲8.4%と急低下

 

製造工業生産予測指数・前月比は6月分・7月分とも上昇に

 

4~6月期実質GDP大幅マイナス予測を裏付ける5月分の生産統計

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・5月分速報値・前月比は▲8.4%と4ヵ月連続の低下になった。15年を100とした季節調整値の水準は79.1と、13年1月分(94.8)、20年4月分(86.4)を下回る2015年基準での最低水準を大幅に更新した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要の減少、部品供給の遅れ、感染拡大防止のための工場の稼働の低下、操業停止などが生じ幅広い業種で生産が低下した。前年同月比は▲25.9%で8ヵ月連続の低下となった。

 

●5月分鉱工業生産指数では、自動車工業、生産用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業をはじめ全15業種が前月比低下となった。

 

●経済産業省は基調判断は19年10月分・11月分・12月分では「総じてみれば、生産は弱含み」だったが、20年1月分では「総じてみれば、生産は一進一退ながら弱含んでいる」と上方修正。2月分も判断は据え置きだった。しかし、3月分で「総じてみれば、生産は低下している」と下方修正、さらに前回4月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」と2ヵ月連続して下方修正となった。今回5月分でも4月分と同じ、「総じてみれば、生産は急速に低下している」との判断になった。

 

●先月発表された5月分製造工業予測指数・前月比は前月比▲4.1%の低下の見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、5月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲5.7%の低下になる見込みで、90%の確率に収まる範囲は▲6.6%~▲4.7%になっていた。実際には、鉱工業生産指数の前月比が▲8.4%になったわけだが、これは試算値の下限を大幅に下回る伸び率である。

 

●5月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲8.4%と3ヵ月連続の低下となった。指数水準77.2で2015年基準で最低水準である。前年同月比は▲26.5%で8ヵ月連続の低下となった。

 

●5月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲2.5%と2ヵ月連続の低下になった。前年同月比は▲0.4%と19ヵ月ぶりのマイナスとなった。出荷の前月比はマイナスとなったものの、感染拡大防止のための工場の稼働の低下、操業停止などで結果として大幅な生産調整が行われたことになり、在庫の前月比、前年同月比がマイナスになった。緊急事態宣言の影響がなくなった6月分以降に、生産の前月比がプラスに転じやすい要因のひとつだろう。

 

●5月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+6.9%で3ヵ月連続の上昇となった。指数水準は148.1で2015年基準で最高水準である。在庫の増加ではなく、出荷の大幅減少によるところが大きいので、出荷が持ち直す局面になれば、在庫率の低下が期待される。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期以降、45度線を上回って推移し、おおむね「在庫積み上がり局面」が続いていた。19年10~12月期は出荷の前年同期比が▲6.5%、在庫が同+1.2%と「在庫調整局面」であった。20年4~5月は出荷の前年同月比が▲21.5%、在庫が同▲0.4%と、出荷の前年同期比が▲5.2%、在庫が同+2.9%だった20年1~3月期に続いて「在庫調整局面」の状態にある。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると6月分は前月比+5.7%の上昇、7月分は前月比+9.2%の上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、6月分の前月比は先行き試算値最頻値で+0.2%の上昇になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲0.8%~+1.2%になっている。

 

●先行きの鉱工業生産指数を、6月分を先行き試算値最頻値前月比(+0.2%)で延長すると、4~6月期の前期比は▲17.1%の低下になる。また、6月分を製造工業予測指数前月比(+5.7%)で延長すると、4~6月期の前期比は▲15.7%の低下になる。4~6月期の鉱工業生産指数は新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻になった時期だけに、1~3月期の前期比上昇から一転して前期比2ケタという大幅低下になる可能性が大きい。

 

●7月分を製造工業予測指数前月比(+9.2%)、8月分・9月分を前月比横這い(0.0%)で延長すると、6月分を先行き試算値最頻値前月比で延長したケースでは、7~9月期の前期比は+6.1%の上昇になる。また6月分を製造工業予測指数前月比で延長したケースでは、7~9月期の前期比は+10.0%の上昇になる。順調にいくと7~9月期は持ち直しが期待される状況だ。

 

(4~6月期のGDP予測)

 

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の4~5月平均対1~3月平均比は▲41.0%の大幅減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同▲3.3%の減少だ。また、商業販売額指数・小売業の4~5月平均対1~3月平均比は▲11.6%の減少になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の4月分の対1~3月平均比は▲8.8%の減少になった。乗用車販売台数の4~5月平均対1~3月平均比は▲27.6%の減少になった。GDP統計の実質個人消費(家計最終消費支出)と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)4月分の対1~3月平均比は▲7.7%とマイナスである。総合的に考えると、4~6月期第1次速報値の個人消費は、前期比で相当大幅な減少率になる可能性が大きいとみられる。

 

●設備投資の関連データである資本財(除.輸送機械)出荷指数の4~5月平均対1~3月平均比は▲8.8%の減少になった。また、建設財は同▲7.0%の減少になった。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される4~6月期の実質設備投資はかなりの前期比減少になる可能性が大きいとみられる。

 

●実質輸出入の動向をみると輸出の4~5月平均対1~3月平均比は▲18.0%の大幅減少になった。控除項目の輸入は同+4.4%の増加になっている。4月分・5月分のモノだけでみると外需は大幅なマイナス寄与になる。4~6月期の外需の前期比寄与度は大幅マイナスになる可能性が現時点では大きいと判断する。

 

●現段階で4月分のデータをもとに総合的に判断すると、8月17日に発表される4~6月期の実質GDP第1次速報値は現行統計史上最大のマイナス成長になる可能性が大きそうだ。ちなみに6月のESPフォーキャスト調査では4~6月期の実質GDP前期比年率▲23.0%という大幅マイナスが予測平均値だが、4月分・5月分の生産統計の結果などはその予測を裏付けるものといえそうだ。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年5月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

(2020年6月30日)

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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